第1645回 2014年ワールドカップ展望(2) 決勝トーナメント進出の先を狙う挑戦者フランス
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■過去20年間の5度のスイスとの対戦で無敗のフランス
プレーオフに続いて組み合わせ抽選でも奇跡が起き、フランスはスイス、エクアドル、ホンジュラスとともにグループEに入った。
世界ランキング8位でポット1のスイスはフランスとは2006年大会でも同じグループリーグに入り、3大会連続で今回が10回目の出場となる。フランスとはこれまでに36試合もしており、戦績はフランスの15勝12敗9分である。しかし、ベルギー同様、大半の対戦は1960年代以前に行われた親善試合である。この20年間の戦績を紐解くと、5回対戦しているが、親善試合は2003年にジュネーブで行われた試合だけで、2004年の欧州選手権、2006年のワールドカップ予選(2試合)、2006年のワールドカップ本大会というタイトルマッチでの対戦が最新の4試合である。この5試合の結果はフランスの2勝3分、スイスのフランスに対する最後の勝利は1992年の欧州選手権直前にローザンヌに行われた親善試合が最後である。フランスは、グループEで最大のライバルと目されるスイスと互角以上の成績を残しているのである。
そしてエクアドルとは2008年欧州選手権の直前にグルノーブルで親善試合を行い、フランスが2-0と勝利している。またホンジュラスとは過去対戦したことがない。
■簡単な組み合わせでグループリーグで敗退した苦い経験
このように考えると少なくともグループEで上位2チームに入ること、すなわち決勝トーナメントに進出することは難しくないと感じられるであろう。しかし、これまでも簡単なグループに入ったと言われながら惨敗したケースが2回ある。2002年の韓国・日本大会(セネガル、ウルグアイ、デンマーク)、そして前回の2010年の南アフリカ大会(メキシコ、ウルグアイ、南アフリカ)がそれに相当する。もちろん何が起こるかわからないが、これらの時と状況は大きく異なる。ワールドカップはほぼ1月の長丁場の戦いである。これを23人のメンバーで戦っていくが、優勝あるいは上位進出を狙うチームはどうしてもコンディションのピークを大会の後半戦に持っていくことになる。これまでのフランスは優勝あるいは上位進出を狙う立場にあり、グループリーグでは十分なコンディショニングができていなかったということは否めない。
■フランスが挑戦者として臨む今回のワールドカップ
しかし、今回は欧州勢の中では最も下位に位置するチームであり、グループリーグからエンジン全開で戦うことを心がけるであろう。そして現在世界ランキングで20位前後に位置するフランスは32チームで行われるようになったワールドカップで初めて挑戦者としての立場で臨むことになる。フランスの現実的な目標は決勝トーナメント進出で満足することなく、決勝トーナメントで1勝して準々決勝、さらに1勝して準決勝に進出することであろう。
■最低でも2勝1分の成績を残したいフランス
フランスのスケジュールであるが第1戦は最も力が落ちると思われるが未知のホンジュラスと6月15日16時にポルトアレグレで対戦し、第2戦は最大のライバルのスイスと6月20日16時にサルバドールで対戦する。そしてグループリーグ最終戦は6月25日17時にリオデジャネイロでエクアドルと戦う。フランスの皮算用としては第1戦で勝ち点3を獲得、そしてスイスには引き分け以上の成績を残し、第3戦のエクアドル戦でも勝利し、2勝1分以上の成績を残したいところである。
決勝トーナメントで1勝あるいは2勝を狙うフランスにとって気になるのは決勝トーナメントの組み合わせである。決勝トーナメント1回戦については、グループEで1位となった場合はグループFの2位と6月30日にブラジリアで、グループEで2位になった場合はグループFの1位と7月1日にサンパウロで対戦する。すなわち、グループリーグで1位になっても2位になっても対戦するのはグループFのチームであり、グループEとFの8チームのうち2チームが準々決勝に残ると考えた方がいいであろう。そしてこの決勝トーナメント進出を想定した組み合わせもフランスにとって有利なものとなったのである。(続く)