第1646回 2014年ワールドカップ展望(3) 準々決勝まで見えたフランスとアルゼンチン
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■決勝トーナメント1回戦で対戦するグループFの勝ち上がりチーム
前回の本連載ではスイス、エクアドル、ホンジュラスとグループEに入ったフランスは、プレーオフに続き抽選会でも奇跡を起こし、グループリーグを突破する可能性が高いことを紹介したが、実はグループリーグでの対戦相手だけではなく、次のステップである決勝トーナメントでの対戦を考えても幸運に恵まれた。
グループEから決勝トーナメントに進出すると1回戦ではグループFからの勝ち上がりチームと対戦する。グループEはシードに相当するポット1からアルゼンチン、ポット2からナイジェリア、ポット3からイラン、ポット4からボスニア・ヘルツェゴビナという顔ぶれである。
アルゼンチンの力が突出しており、グループEのフランス同様の構図であり、アルゼンチンのグループリーグ突破は有力視されている。したがって、フランスもアルゼンチンも決勝トーナメント1回戦での対戦は避けたいところである。
■アルゼンチンとの対戦を回避できるスケジュールのフランス
ここで注目すべきはグループリーグ最終戦の行われる時間である。グループEのキックオフは6月26日17時にフランス-エクアドル戦が行われるが、グループFはそれより4時間早い13時にアルゼンチン-ナイジェリア戦が行われる。すなわち、フランスにとってはアルゼンチンの最終成績を確認してから、アルゼンチンとの対戦を回避するようにエクアドルと対戦することが可能になる。もちろん、フランスがそれまでの2試合で勝ち点6あるいは4をあげていることが前提であるが、フランスとしてはグループリーグは最初の2試合に重点を置くという戦略をとるであろう。
■沿岸部での試合が3試合続くフランス
また、今回のブラジル大会は1994年の米国大会に次ぐ長距離移動のある大会となるが、フランスに関しては合宿地をサンパウロとリオデジャネイロの中間のリベイラン・プレトに構え、ここをベースに移動する。第1戦は南下しポルトアレグレ、中4日で行われる第2戦は海岸沿いに北上してサルバドールに移動する。そして第3戦はまた中4日でリオデジャネイロでの試合となる。移動が大きな敵であるが、それはどのチームにも共通する課題である。ただし、フランスが第2戦で対戦するスイスは第1戦をブラジリアで戦い、第3戦で対戦するエクアドルは第2戦をクリチバで戦う。いずれも内陸部から沿岸部と移動してくる。移動距離だけではなく気候の違いも影響してくる。エクアドルは第1戦を内陸部のブラジリアで戦い、第3戦にして初めて沿岸部での試合となる。それに比べてフランスは移動はあるものの沿岸部での試合が3つ続くのである。
■決勝トーナメント1回戦で中4日の移動を避けたいアルゼンチン
グループリーグから決勝トーナメントに進むに当たり、まず考慮しなくてはならないのは相手が苦手のアルゼンチンかどうかであるが、それ以外にも日程、移動なども考える必要がある。グループEで首位になった場合は中4日の6月30日にブラジリアでグループFの2位と対戦、グループEで2位となった場合は中5日の7月1日にサンパウロでグループFの首位と対戦する。相手さえ考えなければ中4日で長距離移動の伴うサンパウロでの試合を避けるために意図的にグループ2位を狙うことも考えられるが、同じことをアルゼンチンも考えているはずである。アルゼンチンのグループリーグ最終戦は今大会で最も南の会場となるポルトアレグレでの試合である。したがってアルゼンチンは首位を何としてもキープしたいであろう。
このように考えるとグループEの首位はフランス、グループFの首位はアルゼンチンであり、決勝トーナメント1回戦で対戦する相手の力を考えればこの両チームは勝ち抜いて準々決勝に進出する可能性は極めて高いであろう。
準々決勝進出までの道が開けているという点でもフランスは奇跡と言える抽選結果だったのである。(続く)