第1709回 栄光目指す23人(3) チーム力を優先、サミール・ナスリは落選
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ベテランのリオ・マブーバ、若きリーダーのクレマン・グルニエ
前回の本連載では5月13日にディディエ・デシャン監督が発表したワールドカップの登録メンバーのうち、GKとDFを紹介したが、今回はMFとFWを紹介しよう。
MFについては前々回の本連載でヨアン・カバイエ、ブレーズ・マツイディのパリサンジェルマンのコンビ、ポール・ポグバ(イタリア・ユベントス)、ムーサ・シソッコ(イングランド・ニューカッスル)らが有力であると紹介したが、20代半ばの選手が多く、代表歴もそれほど多くはない。現役時代は抜群のキャプテンシーを誇ったデシャン監督についてはこの中盤に経験豊富な選手が欲しいところであろう。
そういう観点でメンバーに入ったのが30歳のリオ・マブーバ(リール)であり、昨年以来フランス代表の試合では皆勤を続けるマチュー・バルブエナ(マルセイユ)はMFでの登録となった。さらにリヨンの若手の23歳のクレマン・グルニエも23人のメンバーに入っている。グルニエについては、所属クラブのリヨンが急速に世代交代を行い、若手選手の多いチームにおいて中盤でリーダーシップを発揮していることが選出の決め手となった。
■マンチェスター・シティのサミール・ナスリは選出されず
このようにマブーバ、グルニエというリーダーシップのある選手が選出されている一方で、落選したのがサミール・ナスリである。デシャン監督は23人のメンバーだけではなく7人の予備登録メンバーにもナスリを選出せず、完全に落選となった。イングランドのマンチェスター・シティに所属するナスリはクラブでは活躍し、プレミアリーグとFAカップという二冠を達成する原動力となり、今季のパフォーマンスという点では文句なしである。しかし、デシャン監督が23人あるいは30人のメンバーに入れなかった理由は明白であり、ナスリは先発メンバーにはいる力があるわけではなく、先発メンバーから外れることを良しとしないから、というものである。この選択は明らかに4年前の南アフリカでのチームの瓦解を反省点としてチームスピリットのある選手を選び、選手の個々の能力よりもチームとしてのベストチームを追い求めていることの表れであろう。
■リヨンのマキシム・ゴナロン、モンペリエのレミ・カベラが予備登録
MFの登録メンバーは以上の7人であるが、予備登録メンバーも興味深い。MFの予備メンバーにはリヨンのマキシム・ゴナロンとモンペリエのレミ・カベラの2人が選ばれた。25歳のゴナロンはこれまでのフランス代表として6試合に出場しているが、今季は出場の機会に恵まれなかった。しかし、予備メンバーに入ることができたのは今季リヨンで53試合という出場試合数の多さによるところが大きいであろう。また、カベラも24歳ながら、モンペリエのトップ下としてユーヌス・べルアンダの後釜として十分な活躍をし、初の代表招集となった。
■最後のFWの座はロイック・レミー
そして、FWはカリム・ベンゼマ(スペイン・レアル・マドリッド)、オリビエ・ジルー(イングランド・アーセナル)、アントワン・グリエズマン(スペイン・レアル・ソシエダ)、フランク・リベリー(ドイツ・バイエルン・ミュンヘン)という予想されたメンバーに加え、ロイック・レミー(イングランド・ニューカッスル)が5人目に入った。
5人目のFWに入るかもしれないと目されていたリヨンのアレクサンドル・ラカゼットは予備登録メンバーに回った。またFWの予備登録メンバーに入ったのはモルガン・シュナイデルラン、日本の吉田麻也、李忠成も所属するイングランドのサウサンプトンの選手である。サウサンプトンではトップ下の選手として豊富な運動量を誇るが、今回フランス代表に初招集、FW登録となった。
当初、13日には30人の予備登録選手を発表すると思われていたが、デシャン監督はこのように23人の登録メンバーと7人の予備登録メンバーを発表したのである。(続く)