第1716回 ホンジュラスに快勝(2) カリム・ベンゼマ、幻のハットトリック
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■過去2回の本大会で勝利をあげていないホンジュラス
港町ポルトアレグレでの開幕戦、相手はホンジュラスである。ホンジュラスは北中米カリブ海予選で米国、コスタリカに次ぎ、常連国メキシコをおさえて3位に入り、本大会出場を果たしている。ホンジュラスは2大会連続3回目の出場であるが、初出場は1982年のスペイン大会である。この時は初戦で開催国のスペインと引き分け、第2戦も北アイルランドと引き分け、2次リーグ進出の望みを託したユーゴスラビア戦は終了間際にPKを与え、ウラジミール・ペトロビッチに決められて敗れ、2分1敗で1次リーグで姿を消している。28年ぶりの出場となった2010年の南アフリカ大会は優勝することになるスペインと対戦して敗れ、続くチリ戦も敗れグループリーグ敗退が決まり、第3戦でようやくスイスと引き分けている。
すなわち、これまで2回のワールドカップの本大会では3分3敗といまだ勝利の味を知らない。
■過去の本大会初戦での初顔合わせ
このホンジュラスとフランスは初顔合わせとなる。フランスにとってワールドカップ初戦で初顔合わせの相手と対戦するのは2002年の韓国・日本大会のセネガル戦以来のことである。この時は0-1と敗れ、フランスはいいところなく大会を後にすることになる。歴史をさかのぼると1986年のメキシコ大会ではカナダと対戦し、1-0と勝利、この大会でフランスは3位になっている。さらに1958年のスウェーデン大会ではパラグアイと対戦、この時は高い得点王となるジュスト・フォンテーヌのハットトリックなどで大量得点、7-3と勝利し、当時の最高の成績となる3位に輝いている。このように歴史を見ていくと開幕戦で未知の相手に勝利して上位進出するか、敗れてそのまま盛り返すことなく大会を去るか、重要な一戦である。
■前半終了間際、カリム・ベンゼマのPKで先制
ポルトアレグレのベイラ・リオ競技場に集まった観衆は43,012人、このフランス-ホンジュラス戦がこの競技場での開幕戦となる。今大会で使用される12会場のうち最後から2番目の登場となったベイラ・リオ競技場は今大会で使用される競技場の中でも指折りの美しい競技場として知られる。
ディディエ・デシャン監督が重要な第1戦のピッチに送り出したイレブンは次のとおりである。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコー、パトリス・エブラ、MFは3人で中央の低めに位置にヨアン・カバイエ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央にカリム・ベンゼマ、右にマチュー・バルブエナ、左にアントワン・グリエズマンという布陣、準備段階の3試合のメンバー起用とは大きな違いはないが、直前のジャマイカ戦では2人のCFのベンゼマとオリビエ・ジルーを起用したが、ホンジュラス戦では中央にベンゼマ、そして若いグリエズマンを左サイドに配した。
試合前の国歌演奏がないというハプニングに見舞われたが、フランスは次々とテンポの速いパス回してホンジュラスを圧倒。ボール保持率は7割を超え、次々とシュートを放つ。ホンジュラスは攻め手がなく、防戦に回るが、前半終了間際にポグバがペナルティエリア内で倒される。このPKをベンゼマが右足のサイドキックで決め、フランスは1-0とリードして折り返す。
■ベンゼマの全得点にからむ活躍でフランス好発進
後半になってもフランスの勢いは止まらない。そして48分、歴史的なシーンが生まれた。カバイエからのクロスをベンゼマがゴール前でシュート、ボールはポストに当たり跳ね返ったところをホンジュラスのGKノエル・バジャダレスが必死のセーブ、しかしこのバジャダレスが触ったボールが一瞬ゴールラインを通過したかに見えた。ここでブラジル人主審のサンドロ・リッチ氏はビデオ判定の結果、ゴールを宣言、記録はホンジュラスのオウンゴールとなったが、実質的にはベンゼマのゴールである。勢いに乗るベンゼマは72分にもゴールを奪う。バルブエナからのクロスをドビュッシーがシュート、こぼれたところをベンゼマが右足でシュート、ベンゼマにとっては幻のハットトリックとなる。
フランスはホンジュラスを圧倒、20本のシュートを浴びせ、3-0と好発進したのである。(この項、終わり)