第1723回 ナイジェリアに勝利(2) 内陸部のブラジリアでキックオフ

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アフリカの強豪ナイジェリア

 フランスは1980年代に行われたワールドカップでは2大会連続で準決勝に進出したが、1990年大会、1994年大会と本大会出場を逃す。1998年の自国開催の大会で久しぶりに出場したが、それ以降5大会連続で出場し、5大会連続でアフリカ勢と対戦する。フランスが不在だった間にアフリカ勢は力を蓄え、フランスが本大会に復帰してからは毎回グループリーグでアフリカ勢と対戦してきたが、ついに今回初めて決勝トーナメントでアフリカ勢と対戦することになる。
 対戦相手のナイジェリアはワールドカップは1994年の米国大会で本大会初出場、まさにフランス不在の時代に世界にデビューし、グループリーグを勝ち上がって決勝トーナメントに進出した。そして2年後の1996年のアトランタオリンピックでは見事に優勝している。そしてワールドカップ本大会は2006年大会以外は予選を勝ち抜いており、アフリカの強豪として君臨している。直近のタイトルマッチでは本連載第1514回から第1517回で紹介した通り、2013年のアフリカ選手権で3回目の優勝を飾っている。

■サンテチエンヌでの唯一の対戦は敗戦

 アフリカを代表する強豪国であるナイジェリア、これまでのフランスとの対戦は1度だけである。本連載第977回で紹介した通り、2009年6月2日にサンテチエンヌで親善試合を行っている。この試合、ナイジェリアの選手の退場によりフランスは数的優位に立ちながら得点を決めることができず、0-1と敗れてしまったのである。
 それから5年、2014年6月30日、フランスはワールドカップの決勝トーナメント1回戦という大舞台、ブラジルの首都ブラジリアで対戦する。

■信頼を勝ち取ったローラン・コシエルニー

 フランスの先発メンバーであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ラファエル・バラン、ローラン・コシエルニー、パトリス・エブラ、MFは3人で中央の低めに位置にヨアン・カバイエ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央にオリビエ・ジルー、右にマチュー・バルブエナ、左にカリム・ベンゼマとなる。
 ベストメンバーともいえる第1戦、第2戦とほぼ同じ陣容であるが、注目すべきはストッパーのコシエルニーの起用である。従来から不安の残るコシエルニーであったが、エクアドル戦に先発し、相手の攻撃陣を完封する活躍で首脳陣からの信頼を勝ち得て、バランとコンビを組むことになる。またエクアドル戦は累積警告で欠場を余儀なくされたカバイエも復帰である。スイス戦で活躍した長身のジルーを中心に据え、ホンジュラス戦のヒーローであるベンゼマも左サイドから必要に応じて前方、そして中央に攻め上がるというパターンで必勝を期す。
 フランスはグループリーグの最終戦は余裕を持ったメンバーで戦うことができたため、このナイジェリア戦の先発メンバーのうち5日前エクアドル戦にも先発したメンバーは半数以下の5人(ロリス、コシエルニー、ポグバ、マツイディ、ベンゼマ)だけである。一方のナイジェリアは、グループリーグ最終戦はフランスと同日に戦い、フランスと同じ試合間隔であるが、先発11人中10人がアルゼンチン戦と同じメンバーである。2トップの一角のマイケル・バナトゥンデがビクター・モーゼスに変わっただけである。

■初めての13時キックオフ、初めての内陸部、初めての高地での試合

 フランスは休養十分であるかに見えたが、選手の動きは軽やかではなかった。グループリーグではポルトアレグレ、サルバドール、リオデジャネイロと沿岸部での試合が続いたフランスであるが、4試合目にして初めて標高のある内陸部での試合となる。また、これまで3試合は16時または17時キックオフであったが、この試合は13時キックオフである。一方のナイジェリアは13時キックオフの試合はアルゼンチン戦で経験済み、また、内陸部での試合もクイアバでのボスニア・ヘルツェゴビナ戦、標高のある地域での戦いもクイアバだけではなくイランと戦ったクリチバで経験している。このあたりのコンディションの差が出たのであろうか。動きのよくない立ち上がりとなったのである。(続く)

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