第1729回 ドイツに惜敗、準々決勝で敗退(5) セットプレーの一撃に泣いたフランス
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■マラカナンで未勝利のフランスとドイツ
ワールドカップで4回目の対戦となるフランスとドイツ、過去の対戦も1958年大会は3位決定戦、1982年大会と1986年大会は準決勝と準決勝以降の戦いであり、準々決勝は最も早い段階での対戦となる。
準々決勝の舞台は今大会のメインスタジアムであるリオデジャネイロのマラカナンである。本連載第1719回から第1721回で紹介した通り、フランスはすでにグループリーグ最終戦でこのマラカナンで戦っており、一方のドイツは今大会マラカナンでは初めてのゲームとなる。ドイツがこのマラカナンで試合をしたのは西ドイツ時代1982年のブラジルとの親善試合以来32年ぶりのことであり、これまでにマラカナンでの勝利の経験がない。
さて、マラカナンでのエクアドル戦はドローに終わったフランスであるが、フランスもまたマラカナンでの勝利の経験がない。今大会の決勝トーナメントで初めてとなる欧州勢同士の戦いは、両国の聖地マラカナンでの初勝利をかけた戦いとなった。
■ホンジュラス戦と同じメンバー、ポジションのフランス
フランスの先発メンバーはGKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコ、パトリス・エブラ、MFは3人で中央の低めに位置にヨアン・カバイエ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央にカリム・ベンゼマ、右にマチュー・バルブエナ、左にアントワン・グリエズマンとなる。
4日前のナイジェリアセントはストッパーがローラン・コシエルニーに代わってサコ、FWの中央はオリビエ・ジルーに代わってベンゼマ、そして左サイドにはグリエズマンが入る。このメンバーと布陣はグループリーグ初戦のホンジュラス戦と同じである。ホンジュラス戦と言えばベンゼマの活躍が鮮やかな記憶として残る。
■苦しい布陣変更を余儀なくされたドイツ
一方のドイツ、システムは4-2-3-1、GKはマヌエル・ノイアー、DFは右からフィリップ・ラーム、ジェローム・ボアテング、マッツ・フンメルス、ベネディクト・ヘベデス、守備的MFは右にバスティアン・シュバインタイガー、左にサミ・ケディラ、攻撃的MFは右にトーマス・ミュラー、中央にトニ・クロース、左にメスト・エジル、そして1トップはミロスラフ・クローゼである。ドイツはアルジェリアとの死闘からメンバーは2人しか変えていないが、システムを4-3-3から4-2-3-1に変え、多くの選手が違うポジション、すなわち本職ではないポジションでのスタートとなった。ドイツは多くの選手が体調を崩しただけではなく、右のDFのシュコドラン・ムスタフィがアルジェリア戦で負傷するという中での苦肉の布陣である。
■序盤の一撃で止まってしまった試合
ドイツの動きは決してよくない。フランスは動きの悪いドイツに対し、スピードのある攻撃を見せる。しかし、試合は思わぬところで止まってしまう。それが12分、左サイド、ゴールから約40メートルの地点からのドイツのFKである。この試合、セットプレーとしてはようやくドイツに訪れたチャンス、キッカーはクロース。カーブをかけたボールがゴール前に上がる。カーブがかかり、ゴール方向に曲がっていくボールに飛び込んだのはストッパーのフンメルス、あわててマークに入ったのは同じストッパーのバラン、しかしこの2人の争いはフンメルスの勢いの勝ち、フンメルスのヘディングシュートがゴールネットを揺らす。
近年は攻撃的なサッカーを志向するドイツであるがこの1点でドイツはかつてのドイツに戻り、フランスの攻撃に白い壁がはねかえす展開となった。フランスは右から左から、そして中央から攻撃を仕掛け、次々とシュートを放つ。そしてフランスは選手交代に合わせ、システムを4-3-3から4-2-3-1、さらには4-4-2と変え、何とか得点を奪おうとする。ボール支配率はほぼ五分であったがシュート数はドイツの9本に対しフランスは13本、そのうち7本はホンジュラス戦で活躍したベンゼマである。しかし、ドイツのGKノイアーの好守にはばまれノーゴール。ベンゼマはGKのロリスと共に5試合すべてでフル出場し、放ったシュートは実に31本であった。その31本目のシュートは後半ロスタイムの94分、サイドに流れることの多かったベンゼマは左サイドからシュートしたが、ノイアーが片手で防ぐ。
フランスは0-1でドイツに敗れ、準決勝に進出することなくブラジルを去ったのである。(この項、終わり)