第1730回 回顧・ワールドカップブラジル大会(1) 強豪リーグを持つ国の不振

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■優勝はフランスを準々決勝で破ったドイツ

 準々決勝でフランスを下したドイツは、準決勝で開催国ブラジルを7-1と下し、決勝戦はアルゼンチンを延長戦の末に1-0と振り切り、24年ぶり4回目の優勝を果たした。南米で開催された大会で初めて欧州勢として優勝したことは特筆すべきことであろう。また試合内容もパス、ドリブルで相手を圧倒し、かつてのようにフィジカルとメンタルを前面に押し出したサッカーから数年をかけて新しい姿に生まれ変わっての優勝、見事である。

■欧州五大リーグから転落したフランスリーグ

 本連載でもしばしば紹介している通り、近年フランスリーグは地位低下している。これはパリサンジェルマンというビッグクラブはあるものの、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグでの早期敗退するチームが多いことに起因する。欧州カップでの過去の戦績を数値化したものがUEFAインデックスであり、フランスリーグは1990年代はイタリアリーグに次ぐ欧州で2位だったこともあるが、イングランド、スペイン、ドイツに抜かれ、2000年代になると欧州で5番目のリーグとなり、欧州五大リーグの末席に甘んじた。そして昨年、ポルトガルリーグに抜かれ、欧州五大リーグの地位から降りることになった。

■1位スペイン、2位イングランド、4位イタリア、5位ポルトガルはグループリーグ敗退

 ところが、今回のワールドカップでは興味深い事象が起こった。それは欧州でチャンピオンズリーグの上位進出の常連チームを多数輩出しているリーグを有する国が次々とグループリーグで敗退したのである。
 UEFAインデックスで最上位はスペインのリーガエスパニョーラ、前回優勝国で国内にはバルセロナ、レアル・マドリッドだけではなく、アトレチコ・マドリッドがチャンピオンズリーグのファイナリストになったことは記憶に新しい。しかしながらスペインは、第1戦でオランダに大敗し、続くチリ戦も連敗、前回王者の早すぎる敗退となったが、欧州一、実質的には世界一のリーグを持つ国の敗退でもあった。
 そしてUEFAインデックスの2位はイングランドのプレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナルとチャンピオンズリーグの上位常連チームを多数抱えている。いち早く外国人枠を撤廃し、多数の外国人選手が流入するあまり、イングランド人選手のレベル低下、イングランド代表のレベル低下を危惧する声もあるが、多くの若いイングランド人選手が育ち、今大会も期待されていた。しかし、イタリアとの第1戦を落とし、続くウルグアイ戦もと敗れ、グループリーグ敗退が決まる。
 欧州のチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの主役であるリーガエスパニョーラ、プレミアリーグを有する両国が厳しいグループとはいえ、連敗して敗退したことは驚きであった。
 そして面目を保ったのはUEFAインデックスで3位のドイツ、ブンデスリーガをリードしているバイエルン・ミュンヘンから多数の選手が代表チームの主力となり、グループリーグを勝ち抜いただけではなく、見事に優勝を果たした。
 UEFAインデックスの4位は1990年代はトップだったセリエAのイタリア。グループDでは初戦こそイングランドに勝利したが、コスタリカ、ウルグアイに連敗し、2大会連続のグループリーグ敗退となった。
 さらにフランスをかわしてUEFAインデックスで5位になったポルトガルリーグ、ポルトガルは欧州予選はスウェーデンとのプレーオフを制して本大会に滑り込むという点ではフランスと同じである。しかし、ポルトガルも第1戦でドイツに大敗、そして米国にようやく引き分けるが、グループリーグで敗退している。

■決勝トーナメントに進んだ欧州勢は中堅リーグ国が中心

 フランスは6位であり、決勝トーナメントに進出しているが、フランスの次の7位はロシアである。ロシアもまたグループリーグ敗退、ようやく8位のオランダがグループリーグを突破している。
 このようにみてみると欧州で上位リーグを持つスペイン(1位)、イングランド(2位)、イタリア(4位)、ポルトガル(5位)、ロシア(7位)がグループリーグで敗退している。それ以外にグループリーグで敗退したのはクロアチア(20位)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(35位)である。
 一方、グループリーグを突破した国は3位のドイツ、フランス(6位)、オランダ(8位)、ベルギー(10位)、ギリシャ(12位)、スイス(13位)であり、その国のリーグの中堅レベルである。(続く)

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