第2219回 ルクセンブルク相手に歴史的な取りこぼし(1) トゥールーズでルクセンブルク戦

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■単独首位に立ったフランスが圧倒的に有利な残り試合の対戦相手

 ダに4-0と大勝、さらに首位スウェーデンはブルガリアに2-3と敗れ、フランスがグループAの首位に立った。この時点での順位を確認しておくと、首位フランス(勝ち点16、得失点差+10)、2位スウェーデン(13、+7)、3位ブルガリア(12、-2)、4位オランダ(10、+3)、5位ベラルーシ(5、-6)、6位ルクセンブルク(4、-12)となっており、4位のオランダまでにワールドカップ出場の可能性がある。
 そして残り試合はフランスはルクセンブルク(ホーム)、ブルガリア(アウエー)、ベラルーシ(ホーム)、スウェーデンはベラルーシ(アウエー)、ルクセンブルク(ホーム)、オランダ(アウエー)、ブルガリアはオランダ(アウエー)、フランス(ホーム)、ルクセンブルク(アウエー)、オランダはブルガリア(ホーム)、ベラルーシ(アウエー)、スウェーデン(ホーム)となっている。すでにワールドカップ出場の可能性がなくなったチームと2試合ホームで対戦することができるフランスは圧倒的に有利である。

■若手を起用しながら勝利したアウエーのルクセンブルク戦

 しかし、その経験的に妥当な楽観論は9月最初の日曜の夜に崩れたのである。9月3日にフランスは最下位のルクセンブルクを迎えた。ルクセンブルクとは今大会の予選ではすでに今年3月25日にルクセンブルクで対戦しており、その模様は本連載第2151回から第2153回で紹介したとおりである。ルクセンブルクとフランスの力量の差は明白であり、フランスはこの試合で多数の若手メンバーを出場させ、7人招集した代表未経験の選手のうちキリアン・ムバッペとバンジャマン・マンディがこの試合で代表にデビューしている。試合はルクセンブルクに39年ぶりの得点を許したが、3-1とフランスが勝利している。

■2回のサッカーワールドカップ、1回のラグビーワールドカップを開催したトゥールーズ

 そして今度はホームでの試合となる。このルクセンブルク戦にフランスが準備したのはトゥールーズの市営競技場である。日本の皆様にとっては初出場となった1998年のワールドカップの初戦、アルゼンチン戦の舞台であることからよくご存知のスタジアムであろう。
 フランス代表がこのスタジアムで試合を行うのは2008年5月31日のパラグアイとの親善試合以来9年ぶりのことである。トゥールーズでのフランス代表戦は1926年のポルトガル戦をはじめとしてこれが7試合目である。またこの市営競技場は1938年のワールドカップの直前に完成し、フランス代表戦6試合に加え、2回のワールドカップの舞台となっている。そして2016年の欧州選手権でも使用され、2024年のパリオリンピックもサッカー競技の会場として期待されている。さらに2007年のラグビーワールドカップでも使用されており、日本はフィジーと戦っている。

■ディエゴ・マラドーナもペレもプレーしたスタジアム

 トゥールーズはラグビーの都と言われる通り、ラグビーの盛んな土地柄であり、それを反映してビッグゲームではラグビーのスタッド・トゥールーザンがこの市営競技場を使用し、過去の観客動員数の多い位試合の上位はラグビーの試合で占められている。本来のテナントであるサッカーのトゥールーズFCはスタッド・トゥールーザンに対しては戦績面で分が悪く、リーグ優勝の経験こそないものの、1986年のUEFAカップではディエゴ・マラドーナを擁するナポリ(イタリア)と対戦し、ナポリを下している。さらに1960年には神様ペレの率いるブラジルのサントスが欧州ツアーを行い、フランス国内では4チームと対戦、スタッド・ド・ランス、ラシン・パリ、スタッド・ド・ランス相手に3連勝する。フランス勢最後の砦としてトゥールーズが立ち向かったが、2ゴールをあげたペレの活躍で、サントスが3-0と勝利する。マラドーナもペレもプレーしたことのあるスタジアムなのである。
 フランス代表の出場するワールドカップ、欧州選手権の予選としては1989年11月のワールドカップイタリア大会予選の最終戦のキプロス戦以来28年ぶり2試合目となる。しかし、その結果は誰しもが予期しえなかったものとなったのである。(続く)

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