第2241回 ワールドカップ予選を振り返る(2) 大量に代表入りしたモナコの若手選手
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■4大会連続でホームで本大会出場決定
前回の本連載で紹介したとおり、2006年大会予選以来3大会ぶりにプレーオフを経験せずに本大会出場を決めたが、今回はホームゲームで自力で本大会への切符をつかんだ。2006年大会の際も最終戦はスタッド・ド・フランスでの勝利で本大会出場を決めたが、その際は同時刻に行われたアイルランド-スイス戦の結果によってフランスが順位を逆転して首位となっている。その後はプレーオフでの本大会出場が決まっているが、2010年、2014年ともプレーオフの第2戦をフランスはホームで戦っているため、4大会連続ホームで本大会出場を決めたことになる。
■大部分の選手は昨年9月から継続的に出場
最後のベラルーシ戦には交代選手も含めて14人の選手が出場したが、3つのグループに分けることができる。まず昨年9月に始まった予選から継続的に出場している選手、今年になってから出場し始めた選手、そして10月になってから出場した選手である。最後の10月になってから出場した選手であるが、サイドDFのルカ・ディーニュとMFのコランタン・トリッソである。今年になってから出場し始めた選手はストッパーのサミュエル・ウムティティ、MFのトマ・ルマール、キングスレー・コマン、キリアン・ムバッペが相当する。昨年9月の予選開始時から継続的に出場している選手が一番多く、主将でGKのウーゴ・ロリス、ストッパーのラファエル・バラン、サイドDFのジブリル・シディベ、ブレーズ・マツイディ、ムーサ・シッソコ、ディミトリ・パイエ、アントワン・グリエズマン、オリビエ・ジルーである。この1年間のチーム編成の方針がきちんとまとまっていたことを表している。 そして連戦の機会は昨年9月(ベラルーシ戦、ブルガリア戦)、今年の8月から9月(オランダ戦、ルクセンブルク戦)、今年の10月(ブルガリア戦、ベラルーシ戦)と3回あったが、昨年9月の連戦はメンバーを入れ替えているが、この秋の連戦はほとんど同じメンバーを起用している。
■全試合に出場したアントワン・グリエズマン、得点王は7得点のオリビエ・ジルー
デシャン監督が予選10試合で起用した選手は30人である。その中で10試合すべてに出場した選手が2人いる。それがグリエズマンとシディベである。特にグリエズマンは10試合すべてで先発メンバーとして起用されている。昨年の欧州選手権での活躍の勢いをそのまま予選にもつなげた。10試合で5得点を記録している。
なお、予選10試合での最多得点は8試合に出場し7得点のジルーである。ジルーは予選だけではなく親善試合でも好調であり、2017年の9試合すべてに出場し、7得点をあげるという抜群の得点力を誇っている。
■全試合に出場したジブリル・シディベをはじめとするモナコ勢
もう1人の全試合出場選手が右サイドDFのシディベである。昨年9月のブルガリア戦でバカリ・サーニャにこのポジションの先発を譲った以外は不動の右サイドDFとして守備だけではなく攻撃の起点となった。このシディベは今予選が始まるまで代表歴はわずか1試合、予選初戦のベラルーシ戦の5日前に行われたイタリア戦で代表にデビューしたばかりであった。シディベはトロワからモナコに移籍したばかりであり、このシーズンのモナコの優勝に大きく貢献した。
近年のフランスのサッカーはパリサンジェルマンの独壇場であったが、そのタイトル独占に待ったをかけたのがモナコであり、このチームからシディベ、バンジャマン・マンディ、ルマール、トリッソ、ムバッペが代表チームに入っている。いずれも昨年から今年にかけて代表入りしたばかりの選手である。ボスマン判決以降代表クラスだけではなく、それを目指すレベルの選手も国外のクラブに所属し、初代表時にすでに国外のクラブに所属、というケースが多くなっている。そのような時代の流れの中で、モナコの快進撃と多くの選手が代表入りを果たしたことは特筆すべきである。(この項、終わり)