第2276回 2018年ワールドカップ展望 (6) ブラジル、ドイツが優勝争いの軸
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■開催国ロシアのグループAを圧倒するグループBのイベリア勢
前回の本連載ではワールドカップでのフランスの戦いを予想してみたが、今回は全体を眺め渡してみよう。
まず、前回の本連載と重複するが開催国ロシアの入ったグループAは混沌としている。かつては強豪国であったロシアもその勢いを失い、出場32か国中最下位のFIFAランキングとなっている。クラブレベルではビッグクラブも存在するが、ナショナリズム発揚の場である代表チームがすっかり減退してしまった。とは言っても開催国でホームアドバンテージがある。しかし、力量的には南米のウルグアイ、ングランドのリバプールで活躍するモハメド・サラーのエジプトがリードしている。この両チームが初戦で対決、この初戦に勝利したチームと初戦のサウジアラビア戦で勝ち点を早期に獲得したロシアが決勝トーナメントに進出するであろうが、決勝トーナメントでは1回戦でグループBからの勝ち上がり組に敗退するであろう。
そのグループBはスペインとポルトガルで決まり、注目の1位争いであるが、この両チームもまた初戦で対決、手堅く引き分けになった場合は得点力に上回るポルトガルの首位突破が濃厚である。
■グループリーグで力が突出するフランス、アルゼンチン、ブラジル、ドイツ
そしてグループCはフランスが首位、そして侮れないのがデンマーク、過去1年間負けていない。この好調ぶりをキープできればペルーに競り勝って2位に入るであろう。
グループDもグループC同様にアルゼンチンの力が抜けている。2年前の欧州選手権で旋風を巻き起こしたアイスランドとタレント軍団のクロアチアが最終戦で対戦、2位争いが注目というのもグループCと同じ構造である。
グループEはブラジルとスイスの力が抜け出ている。そのブラジルとスイスの間にも相当の差があるが、ブラジルとスイスは初戦で対戦、毎回立ち上がりに苦労するブラジルにスイスがどこまで迫れるかが注目の的である。
なぜならばグループEの勝ち上がりチームは決勝トーナメント1回戦でグループFの勝ち上がりチームと対戦する。グループFにはドイツがいる。したがってグループEでブラジルは首位を確保したいところである。そのグループFでドイツを追うのはメキシコとスウェーデン、安定した力を見せるメキシコに対し、プレーオフでイタリアに競り勝ったスウェーデン。両国の直接対決は最終戦、それまでにどれだけドイツに対して踏ん張れるか、そして韓国相手に大量点を奪うことができるか、第3戦を迎える時点での星勘定によって勝負は決まるであろう。
■圧倒的な力を持つチームのないグループGとグループH
グループGもベルギーとイングランドで確定。取りこぼしが多く、何度も熱狂的なファンを失望させてきたイングランドもパナマ、チュニジア相手ならば勝ち点6を取るであろう。
そしてこのグループGは首位争いがそれほど重要ではない。それは決勝トーナメント1回戦の相手がグループHの勝ち上がりチーム、おそらくコロンビアとポーランドになるであろう。決勝トーナメント1回戦の相手にドイツやブラジルのように圧倒的な力を持つチームと対戦する可能性がない場合、グループリーグの戦いは楽になる。
■カギとなる準々決勝、ブラジルとドイツが抜け出すか
このように考えると決勝トーナメント1回戦を突破する力があるのはグループBのポルトガル、スペイン、グループCのフランス、グループDのアルゼンチン、グループEのブラジル、グループFのドイツ、グループHのベルギー、イングランドとなるであろう。
そして準々決勝はポルトガルまたはスペイン-フランス、ブラジル-ベルギーまたはイングランド、ポルトガルまたはスペイン-アルゼンチン、ドイツ-ベルギーまたはイングランドという組み合わせとなる。
このように考えると決勝はブラジル-ドイツという予選で好調だったチーム同士の対戦、2002年大会以来の南米と欧州の両雄の対戦となるであろう。
もしフランスが準々決勝でイベリア勢を倒し、準決勝でブラジルを下せば、決勝でドイツとの顔合わせ、あのパリ同時多発テロの起こった試合と同じカードとなる。
ワールドカップイヤーの今年、ファンの関心は尽きない。(この項、終わり)