第2347回 格下豪州に辛勝、不安を残して発進(1) カザニでフランスを迎え撃つ豪州
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■米国戦の翌日に移動、ベースキャンプのイストラへ
アイルランド、イタリアと連勝して、ベストメンバーで臨んだ米国戦であるが、押し気味に試合を進めていたにもかかわらず、不運なポスト直撃のシュート、そして守備の乱れからの失点もあり、ドローに終わってしまった。さらにオリビエ・ジルーも負傷退場、ディディエ・デシャン監督にとってはまさかの国内最終戦となった。
しかし、この試合の総括をする間もなく、試合翌日の6月10日にイレブンはロシア入り、キャンプ地のイストラ入りする。イストラはモスクワ近郊にあるが、32チームのうち、モスクワ近郊をベースキャンプに選んだチームはほぼ3分の1の10か国あった。それ以外にキャンプ地として選んだ国が多かったのがサンクトペテルブルクの5か国、カザニの3か国である。基本的には交通のハブとなるモスクワの近くか一次リーグの初戦の会場に近い所を選んでいる。
フランスのベースキャンプはイストラのグレボベッツ競技場であるが、そこから約10キロ離れたコストロホに宿泊する。閑静であり、かつ外部とシャットダウンされた環境で大会を迎えた。
■予選突破後に監督が交代した豪州
米国戦からちょうど1週間、6月16日13時、カザニのカザニアリーナでフランスはワールドカップ初戦を迎える。
相手の豪州は日本の皆様は良くご存じのチームであろう。このところはワールドカップ本大会の常連国であるが、今大会の予選は苦しんだ。アジア最終予選のグループBでは3位となり、グループAで3位のシリアとのプレーオフを制し、北中米カリブ海4位のホンジュラスとのプレーオフを経て4大会連続5回目の本大会出場となった。
しかし、ここから波乱が待ち受ける。本大会出場に導いたアンジェ・ポステコグルー監督が予選終了後に辞任、横浜Fマリノスの監督に就任してしまう。ワールドカップに出場すると言っても豊富な資金をバックにするビッグクラブの監督の方が魅力のあるポストなのであろう。豪州協会は人選に苦労したが、結局、アジア予選のライバルであったサウジアラビア代表の指揮を執っていたオランダ人のベルト・ファンマルワイクをようやく1月末に監督として迎え入れたのである。2010年大会ではオランダ代表を率いて準優勝に導き、オランダのフェイエノールト、ドイツのボルシア・ドルトムントなどの監督経験もあるベテラン監督である。ワールドカップ常連国とは言っても、世代交代を積極的に進め、代表経験の浅いメンバーが中心である。また今年初めの監督交代がその選手の入れ替えを促進している。
■初陣は大敗するが、中立地でコロンビアとスコアレスドロー
3月の末には欧州で新監督の初陣となる親善試合を2試合行っている。3月24日にはオスロでノルウェーと対戦し、ワールドカップに出場しないチームに1-4と大敗を喫したが、3月27日には3日前にフランスに対し0-2から3連続ゴールで3-2と逆転勝ちをしたばかりのコロンビアに押されながらもスコアレスドローに持ち込む。コロンビアを基準に考えれば、ホームで敗れたフランス、中立地で引き分けた豪州、中立地となるカザニでの戦いは楽観できない。
代表選手の所属チームが欧州、豪州、日本など分布する豪州は5月下旬からトルコで合宿、6月に入ってから最後の親善試合を組み、6月1日にはチェコに4-0と大勝、フランスが米国と引き分けた9日にはハンガリーに2-1と競り勝っている。
■第1戦の地、カザニをベースキャンプに選んだ豪州
そして豪州がロシアでのベースキャンプとして選んだのはカザニである。ベースキャンプについては、モスクワのような交通の要地を選ぶ考え方と第1戦の開催地を選ぶ考え方があるが、フランスは前者、豪州は後者を選んだ。豪州は前回のブラジル大会の際に第1戦の会場のクイアバから遠く離れた沿岸部のヴィトーリアをキャンプ地に選んで失敗している。その反省から今回は第1戦を迎えるカザニをベースキャンプとし、フランスを迎え撃つのである。(続く)