第2355回 アルゼンチンとの点の取り合いを制す(2) アントワン・グリエズマンのPKで先制

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■前回の対戦はマルセイユでアルゼンチンが2-0で勝利

 前回の本連載の最後に今世紀に入ってからのフランスとアルゼンチンの対戦は2試合とも遠来のアルゼンチンが勝利したと紹介したが、最後の対戦は2009年2月11日のマルセイユでの親善試合である。9年も前のことであるが、この試合に出場していた選手で今回のワールドカップに出場している選手がフランスでは1人、GKのスティーブン・マンダンダである。一方、アルゼンチンはリオネル・メッシ、ハビエル・マスチェラーノ、セルヒオ・アグエロが先発出場している。この試合は本連載第938回から第940回で紹介したとおりであるが、かつてマルセイユ移籍が取りざたされたディエゴ・マラドーナがアルゼンチンの監督を務めていたこともあり、注目の一戦となったが、アルゼンチンがメッシの活躍で2-0と勝利する。フランス代表は、サッカーの都マルセイユで実に44年ぶりの黒星を喫したのである。

■ワールドカップではこれまで2回対戦し、いずれもアルゼンチンの勝利

 さらにワールドカップの歴史をさかのぼれば、アルゼンチンとは一次リーグで2回対戦、1930年の第1回大会ではアルゼンチンが1-0で勝利、1978年大会でも2-1と勝利している。1978年のフランスの1得点はミッシェル・プラティニのワールドカップ初ゴールであったが、この試合でアルゼンチンは二次リーグ進出を決め、フランスは一次リーグ敗退が決まった。そしてこの試合を最後にフランスはワールドカップで南米勢相手に負けておらず、初の決勝トーナメントでの対戦で初勝利をあげたいところである。

■第2戦のペルー戦と同じメンバーのフランス、第3戦とほぼ同じメンバーのアルゼンチン

 フランスは南米勢との対戦となったペルー戦と同じメンバーで臨む。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバンジャマン・パバール、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、ルカ・エルナンデスと守備陣は変わらない。MFは低い位置の右にエンゴロ・カンテ、左にポール・ポグバ、3人の攻撃的なMFは右にキリアン・ムバッペ、中央のトップ下にアントワン・グリエズマン、左にブレーズ・マツイディ、FWの1トップにオリビエ・ジルーというメンバーである。フランスは一次リーグ第3戦のデンマーク戦ではメンバーを大幅に入れ替えたため、休養十分のメンバーがずらりと並ぶ。
 一方のアルゼンチンは1分1敗で一次リーグの最終戦を迎えたため、ベストメンバーで戦い、ナイジェリア戦の先発メンバーと入れ替わったのは1人だけという厳しい状況の中で決勝トーナメントの初戦を戦う。ナイジェリア戦ではCFにゴンサロ・イグアインを起用したが、フランス戦ではベンチに下げ、CFを主将のメッシに託す。
 そして両チームとも警告を受けている選手が多く、この試合で警告があるようだと準々決勝に進出した際に出場停止となる。先発メンバーのうちではフランスはマツイディとポグバ、アルゼンチンはガブリエル・メルカド、エベル・バネガ、メッシ、マスチェラーノ、ニコラス・オタメンディと半数近くが該当する。

■キリアン・ムバッペが倒され、アントワン・グリエズマンのPKでフランスが先制

 警告には要注意の選手が多いが、試合は背に腹は代えられない激しいものとなった。フランスのキックオフで始まった試合は、まずアルゼンチンが攻めに出るが、5分過ぎからフランスもエンジンがかかり始める。
 8分にフランスは好位置でFKのチャンスを得る。グリエズマンとポグバがセットされたボールの前に立ち、結局グリエズマンがシュートを放つが、クロスバーに嫌われる。フランスの攻勢は続き、11分にフランスはムバッペがボールをペナルティエリア内に持ち込む。スピードに乗った神童のドリブルをアルゼンチンの守備陣は止められず、マルコス・ロホがムバッペにファウル。PKが与えられ、今度はグリエズマンが決めて、フランスが1点リードする。19分にもフランスはペナルティエリアのすぐ外からFKのチャンスを得て今度はポグバがゴールを狙うが、バーの上を飛び越えていき、追加点はならず。フランスが先手を取ったこの試合は思わぬ展開になっていく。(続く)

このページのTOPへ