第2360回 ベルギーに勝利、決勝進出(2) 手の内を知った同士の対戦
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■これまでに73回の対戦のあるフランスとベルギー
フランス、ベルギー、クロアチア、イングランドが四強を占めた今大会準決勝はフランス-ベルギー戦とクロアチア-イングランド戦となった。本連載でしばしば紹介している通り、フランスと最も対戦回数が多いのはベルギーである。フランスの代表チームが最初に試合をした相手がベルギーであり、1960年代までは毎年のように定期戦を行ってきた。しかし、ワールドカップや欧州選手権の予選が行われるようになりベルギーとの定期戦を行う日程的な余裕はなくなってきたが、それでもこれまでの対戦数は73試合と最多であり2位のイングランドの41試合を大きく引き離している。
■ベルギーのクラブに所属時にフランス代表にデビューしたジャン・ピエール・パパン
タイトルマッチでの対戦は欧州選手権予選で2回(4試合)、ワールドカップ予選で1回(2試合)、本大会は1984年の欧州選手権と1986年のワールドカップでそれぞれ対戦している。最後のタイトルマッチでの対戦は1986年ワールドカップの3位決定戦である。それ以降親善試合で8回対戦し、フランスの3勝3分2敗とほぼ拮抗した成績を残している。1986年大会の3位決定戦は大幅にメンバーを入れ替えており、参考にならないが、2大会連続となる3位決定戦に出場したフランスは前回大会のポーランド戦よりも高いモチベーションで臨み、試合は延長戦にもつれ、4-2と勝利した。そして勝利そのものよりも大きかったのがジャン・ピエール・パパンのゴールである。パパンはベルギーのブルージュに在籍していた時に代表に招集されデビューする。国外チームに所属する選手の代表デビューは今では珍しいことではないが、当時は非常に珍しいケースであった。
■フランスリーグで活躍するベルギーの選手たち
このようにサッカーの世界でフランスに最も近いのはベルギーである。1904年の初対決から1世紀以上たってもそれは変わらない。23人のベルギー代表の選手のうち、フランスリーグに所属しているのはパリサンジェルマンのトマ・ムニエとモナコのユーリ・ティールマンスの2人だけであるが、所属したことがあるとなるとミッチー・バチュアイ(マルセイユ)、エデン・アザール(リール)、トーガン・アザール(RCランス)の3人が加わる。
■国内外のビッグクラブでのチームメイト対決
さらに注目すべきは現在の所属である。ベルギーの選手が所属しているパリサンジェルマンにはベルギーのムニエに加え、フランスのアルフォンス・アレオラ、プレスネル・キンペンベ、キリアン・ムバッペが所属し、モナコにはベルギーのティールマンス以外にフランスのトマ・ルマールとジブリル・シディベがチームメイトである。そして国外のビッグクラブにも多くのチームメイトがいる。イングランドのチェルシーにはフランスのオリビエ・ジルーとエンゴロ・カンテに対しベルギーのバチュアイ、チボー・クルトワ、エデン・アザール、マンチェスターユナイテッドはフランスのポール・ポグバに対し、ベルギーのロメル・ルカク、マルーアン・フェライニ、トットナム・ホットスパーにはフランスのウーゴ・ロリスに対し、ベルギーはヤン・ベルトンゲン、ムーサ・ダンベレ、トビー・アルデルバイレルト、マンチェスターシティはフランスのバンジャマン・マンディとベルギーのケビン・デブライネ、バンサン・コンパニーが所属している。スペインのバルセロナにはフランスのサミュエル・ウムティティとウスマン・ダンベレベルギーのトーマス・ベルメーレンが所属している。
そして過去にチームメイトであったケースをあげればトーガン・アザールのRCランス在籍時にはラファエル・バランが所属していたなど枚挙にいとまがない。
フランス代表の23人のうち、現在のベルギー代表の23人とチームメイトになったことがないというのはコランタン・トリッソ、スティーブン・エンゾンジ、ナビル・フェキル、フローランス・トーバンのわずか4人だけである。フランス-ベルギー戦は手の内を知った同士の対戦となったのである。(続く)