第2364回 フランス、輝く2回目の優勝(2) 若きイングランドに逆転勝ちしたクロアチア
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■フランス同様に若い選手が中心のイングランド
欧州予選のプレーオフを経て本大会に出場し、グループリーグは3戦全勝、決勝トーナメントでは1回戦、準々決勝とPK戦を勝ち上がったクロアチア、準決勝の相手はイングランドである。1990年のイタリア大会で準決勝に進出したのを最後に、ワールドカップでは上位に進出することができなかった。
イングランドは欧州予選では相手にも恵まれたこともあり無敗で切り抜ける。このチームの指揮官はガレス・サウスゲート、2年前の欧州選手権後にサム・アラダイス監督が退陣したのを受けて、21歳以下の代表監督からフル代表の監督に昇格した。今大会に関しては予選で活躍した選手を外して若手中心のメンバーでロシア入りした。フランスでの欧州選手権ではイングランドは決勝トーナメント1回戦で敗退、フランスは自国開催ということもあり準優勝と、対照的な結果であったが、両国は予選にはあまり出場しなかったメンバーが本大会にエントリーし、メンバーの平均年齢はナイジェリアに次いで2番目に若くなっている。アンダーエイジの監督を務めていたサウスゲート、長期政権のディディエ・デシャンと対照的であるが奇しくもドーバー海峡を挟むライバル国の選手構成が似たものとなり、フランス国内ではローラン・ルノーをはじめとしてイングランドとの対戦を望む声が強かった。
■PK戦ではワールドカップで負け続けのイングランド
サウスゲートは1990年代の名DFであるが、1996年の欧州選手権の準決勝のドイツ戦、PK戦となり、両チーム5人全員が成功させ、6人目として出場し、失敗したという苦い思い出がある。
ワールドカップで初めてPK戦が行われたのは1982年大会準決勝のフランス-西ドイツ戦であり、この時フランスは敗れている。PK戦で初めての敗者となったフランスであるが、その後は1986年高い準々決勝のブラジル戦、1998年大会準々決勝のイタリア戦で勝利し、2006年大会の決勝でイタリアに敗れ、2勝2敗である。一方のイングランド、1990年大会の準決勝で西ドイツに敗れて以来、1998年大会1回戦のアルゼンチン戦、2006年大会準々決勝ポルトガル戦と3連敗している。PK戦が鬼門のイングランドであったが、この大会では決勝トーナメント1回戦のコロンビア戦では終盤に追いつかれてPK戦となったが、ここでイングランドのワールドカップ史上初めてPK戦で勝利する。
■準々決勝でスウェーデンを破り、目論見通りのイングランド
準々決勝ではスウェーデンに勝利し、実に28年ぶりの準決勝進出となる。一次リーグの最終戦では決勝トーナメントの準々決勝でブラジルと対戦することを回避すべく、ベルギー相手に低調な試合で2位通過となったが、まさに目論見通りの展開となった。
■芸術的なFKでの先制も実らず、若さが露呈し、クロアチアが初の決勝進出
そのイングランドの相手はクロアチアである。30歳前後の脂の乗り切った欧州のビッグクラブで実績をあげているルカ・モドリッチ、マリオ・マンジュキッチ、イバン・ラキティッチ、ベドラン・チョルルカなどを中心とするクロアチアに対し、彼らと同世代の選手がほとんどいないイングランドはプレミアリーグ組とは言っても若手が中心であり、主将のハリー・ケーンはまだ24歳である。
メイン会場のモスクワのルジニキ競技場での試合、延長、PK戦の続いたクロアチアは疲労のせいか、立ち上がりから精彩を欠く。前半の5分、クロアチアはイングランドの攻撃をペナルティエリアのすぐ外でファウルで止める。このFKをキーラン・トリッピアが直接狙う。カーブのかかったボールは壁の上をきれいに越えてゴールネットを揺らす。さらにイングランドはガッザの再来、22歳のデル・アリが攻撃を組み立て好機を演出するが、追加点はならず。
後半に入り、68分、クロアチアはイバン・ペリシッチが同点ゴール。ここでイングランドの若さが出た。試合としてはイングランドが優勢、そしてスコアも同点である。しかしながら、攻撃が単調になる。
試合は延長戦に入り、延長後半の109分、ゴール前のヘディングでのパスをマンジュキッチが左足でゴールに突き刺す。ここでイングランドの52年ぶりの夢は破れる。
クロアチアが史上初めて決勝に進出したのである。(続く)