第2368回 フランス、輝く2回目の優勝(6) 劣勢の中で4ゴール、ディディエ・デシャン2度目の栄冠
1998年の「フランス・サッカー実存主義」で連載を始めて、早いもので20年たちました。今回が通算して2500回目の連載となります。記念すべき節目の連載でフランスのワールドカップ優勝をお伝えできることをうれしく思います。引き続きよろしくご愛読のほどお願いいたします。
■延長戦続きのクロアチアが試合を優勢に進める
アルゼンチン人の主審のネストル・ピタナ氏のコイントス、勝ったのはフランスでクロアチアのキックオフで試合は始まった。
準決勝からの試合間隔が短く、決勝トーナメントに入ってから3試合連続で延長戦を戦っているクロアチアは疲労が心配されたが、ルジニキ競技場のピッチの上での運動量は青ではなく赤白がはるかに勝った。フランスはボールタッチのミスが多く、守勢の試合となる。準決勝のベルギー戦に続いてフランスは主導権を相手に与えてしまう。最初の10分間はほとんどの時間帯がフランス陣内で行われた。ベルギー戦もそうであったが、今大会に入ってからのフランスの強みは押し込まれていても守備陣にミスが出ないことである。
■シュート数1で2点を挙げ、逆転したフランス
逆にフランスはクロアチアのミスを誘った。アントワン・グリエズマンがクロアチア陣の右サイドでファウル、フランスはFKを得る。これをグリエズマン自らが蹴り、ボールはゴール前に、両チームの選手が競り合うが、ゴール前まで戻って守備に入っていたマリオ・マンジュキッチに当たり、ボールは自らのゴールに入ってしまう。フランスはオウンゴールで先制したが、シュート数ゼロでの先制点となった。
フランスがまさかの先制点をあげたが、試合のクロアチアペースは変わらず、次々にフランスのゴールを脅かす。21分にはルカ・モドリッチのFKにゴール前まで上がっていたストッパーのドマゴイ・ビダがヘディングで合わせるものの、枠を外れる。28分にはイバン・ペリシッチがペナルティエリアのすぐ外でファウルを受け、FKのチャンス、モドリッチの蹴ったFKのターゲットは右サイドのシメ・ブルサリコ、こぼれたところをイバン・ペリシッチが左足でゴールに突き刺し、クロアチアは同点に追いつく。
フランスの勝ち越し点はこれまた意外であった。34分に右サイドからグリエズマンがCKを蹴る。ボールはゴールラインを割り、一旦はGKのジャッジが下されたが、VARとなる。主審の判定はクロアチアのペリシッチのハンドとなり、フランスにPKが与えられる。キッカーはグリエズマン、慎重に決めてフランスは勝ち越す。実はこのPKがフランスにとってこの試合初めてのシュートであった。
また、スペインのアトレチコ・マドリッドに所属するグリエズマンはヨーロッパリーグの決勝でも得点をあげているが、同年に欧州カップとワールドカップの決勝でともにゴールを決めた3人目の選手となった。1974年大会の西ドイツのゲルト・ミューラー(バイエルン・ミュンヘン、西ドイツ)、1986年大会のアルゼンチンのホルヘ・バルダーノ(レアル・マドリッド、スペイン)が先例であるが、2人とも優勝イレブンとなっている。
■ペレに次ぐ若さで決勝戦でゴールをあげたキリアン・ムバッペ
劣勢のフランスであるが、このグリエズマンのPKで自信と確信を得た試合運びとなった。後半に入り、55分にディディエ・デシャン監督はこの試合の前半に警告を受け、プレーが消極的になっていたエンゴロ・カンテを下げてスティーブン・エンゾンジを投入、クリアチアは攻め続けるが決定的なチャンスを作ることができない。59分にはキリアン・ムバッペが右サイドを駆け抜け、グリエズマンにパス、グリエズマンは5点目を狙わず、ポール・ポグバのシュートにつなげ、3-1とリードを広げ、65分にはムバッペがルカ・エルナンデスのパスを受け、右足のミドルシュートで勝利を決定づける4点目をあげる。19歳6か月のムバッペは決勝戦で得点をあげた選手としては1958年大会のペレの17歳8か月に次いで2番目に若い選手となった。
終始攻め続け、ボールを支配し、シュートを浴びせ続けたクロアチアは69分にサミュエル・ウムティティとロリスのパスのミスをついてマンジュキッチが1点を返すにとどまった。
■20年前の主将ディディエ・デシャン、監督としても世界一に
4-2というスコアでフランスが勝利、20年ぶり2回目の優勝を遂げ、デシャンはブラジルのマリオ・ザガロ、西ドイツのフランツ・ベッケンバウアーに次いで選手としても優勝経験のある3人目の監督となったのである。(この項、終わり)