第3095回 ワールドカップメンバー発表(2) 負傷者の穴を埋めるランダル・コロムアニとアクセル・ディザジ
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■練習中に負傷して離脱したクリストファー・ヌクンク
秋以降負傷者が続出し、ポジションによっては経験の浅い選手を中心に構成されたフランス代表は、フランスをはじめとする欧州主要リーグが中断前の最後の試合を行った翌日の14日、クレールフォンテーヌに集合し、16日にはカタールに向けて出発した。
合宿初日にプレスネル・キンペンベの出場が難しいことがわかり、アクセル・ディザジを招集したが、2日目の15日にも事件は起こった。練習中にエドゥアルド・カマビンガとクリストファー・ヌクンクが接触、ヌクンクは右ひざを負傷し、カタールに向けて出発する前にチームを離脱することになってしまった。
■東京オリンピックに出場したランダル・コロムアニ
ヌクンクに代わってランダル・コロムアニを追加招集することになった。コロムアニについては日本の皆様はよくご存じであろう。なぜならば、昨年の東京オリンピックに出場したからである。フランスのオリンピックチームのメンバーの中から唯一ワールドカップメンバーとなった。
コロムアニについては本連載では所属クラブのナント、フランクフルト(ドイツ)での活躍以外に代表入りについて第3069回で取り上げている。代表にデビューしたのは9月25日のオーストリア戦、後半アディショナルタイムに同郷、同年のキリアン・ムバッペに代わって出場している。続く25日に行われたデンマーク戦では終了10分前にアントワン・グリエズマンに代わって出場、フランス代表経験のある選手の中では最も試合出場時間の短い選手である。
■遠征先の日本からカタールに向かったコロムアニ
しかし、所属チームでの活躍は目覚ましい。今夏まで所属していたナントでは攻撃陣の中心として得点、アシストを重ね、フランスカップ優勝を獲得した。低迷が続いていたチームを久しぶりに欧州カップに導いた。ちょうどナントとの契約が今夏切れることになったが、ナントの会長との関係が良好ではなかったこともあり、フランクフルトへ移籍することを選んだ。フランクフルトは開幕戦でドイツにおける絶対王者のバイエルン・ミュンヘンと対戦、1-6と大敗したが、コロムアニは唯一の得点をあげ、信頼を獲得し、前年度のヨーロッパリーグ優勝チームとして臨んだチャンピオンズリーグのグループリーグでも2位となって決勝トーナメントに進出する。元日本代表の長谷部誠、現日本代表の鎌田大地の2人を擁するフランクフルトはジャパンツアーを決行したが、日本に到着したばかりのコロムアニはカタールに直行することとなったのである。
日本のファンの皆様にとってはコロムアニのプレーを見ることができなかったのは残念であるが、東京オリンピックに出場し、日本から開催地のカタールに向かったという日本に縁のある選手であり、本大会での活躍に注目していただきたい。
■コンゴ民主共和国代表にも選出された唯一の新人のアクセル・ディザジ
そして、26人のメンバーの中で唯一の新人であるディザジを紹介しよう。ディザジは現在モナコで活躍する24歳のストッパーである。両親はコンゴ民主共和国の出身であり、母国を離れパリ近郊にやってきた。ディザジはアンダーエイジのフランス代表に選出されていたが、2020年3月には2021年のアフリカ選手権予選を戦うコンゴ民主共和国代表に選出される。当時のフランス代表のストッパーにはキンペンベの他、クレマン・ラングレ、クルト・ズーマ、ラファエル・バランなどが名を連ね、ディザジのフランス代表入りは難しく、コンゴ民主共和国代表入りに理解を示すファンも少なくなかった。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によってアンゴラとの予選の試合は延期となり、ディザジのコンゴ民主共和国代表デビューは見送りとなる。これがディザジの運命を変えたのかもしれない。当時、スタッド・ド・ランスに所属していたディザジはその夏にモナコに移籍、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの試合にも出場し、キンペンベの離脱によりフランス代表入りしたのである。(続く)