第3103回 グループリーグ最終戦はチュニジアに敗戦 (1) 連勝した2試合で注目された選手たち
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■異次元の活躍を見せたキリアン・ムバッペ
グループリーグ第2戦でフランスは最大の難関のデンマークに勝利した。両翼から仕掛けた攻撃が機能し、ブロックを形成した守備陣も危なげなかったが、なんといっても勝因はキリアン・ムバッペの存在であろう。左サイドからの攻撃に関してはデンマークも相当警戒していたはずであるが、対応しきれず、そして2得点とも決めたのはムバッペであった。1点目はテオ・エルナンデスとのスピードに乗った攻撃からのマイナスのパスを受けてのゴール、そして2点目は右サイドからのクロスを2人のディフェンス陣にはさまれながら、太ももで押し込んだ。今大会はムバッペのための大会であると誰しもが思ったであろう。
ただ、連勝のヒーローはムバッペだけではない。兄のルカ・エルナンデスの代役となったテオ・エルナンデス、安定したプレーを継続するアントワン・グリエズマン、ティエリー・アンリに代表通算ゴール数で並んだオリビエ・ジルー、豪州戦でチームを覚醒させる同点ゴールと逆転のアシストを記録したアドリアン・ラビオ、変幻自在のドリブルで相手の守備をかく乱させたウスマン・デンベレなどの活躍が目立ったが、第2戦のデンマーク戦に出場した選手のトピックを紹介しよう。
■復活が心強いラファエル・バラン
負傷者が多数いる中で、ディディエ・デシャン監督がそれを承知でメンバーに入れたのがラファエル・バランである。2014年のワールドカップからフランスの守備の中心として活躍してきたが、怪我も多く、9月25日のUEFAネーションズリーグのデンマーク戦には出場しなかった。豪州戦はベンチで試合を見つめ、プレスネル・キンペンベの負傷離脱によって手薄になったストッパーとしてデンマークの攻撃を防いだ。終盤に第1戦で先発出場したイブラヒマ・コナテにポストを譲って退いたが、バランの復調は心強い。また、主将はGKのウーゴ・ロリスが務めて久しいが、フィールドプレーヤーとしてのリーダーシップにも期待したい。
■親子二代で対戦したマルクス・テュラムとカスパー・シュマイケル
このバランが目標としてきたのが1998年優勝メンバーのリリアン・テュラムである。リリアン・テュラムの息子のマルクス・テュラムは今回26番目の選手として招集された。リリアン・テュラムはデンマーク戦では後半に入って63分にジルーに代わって出場した。トップに入ったわけであるが、相対するデンマークのGKは前回の本連載でも紹介したカスパー・シュマイケルである。テュラムもシュマイケルも親子で代表入りしているが、親同士は2回対戦したことがある。最初は1996年11月9日にコペンハーゲンで行われた親善試合、この時はデンマークが1-0と勝利している。2回目の対戦は2000年6月11日、欧州選手権のグループリーグの初戦である。フランスは3-0と圧勝し、優勝へと駆け上る。一方のピーター・シュマイケルにとっては最後の国際大会となったのである。それから22年、背番号26と背番号1が同じフィールドに立った。2人のこれといった見せ場はなかったが、マルクス・テュラムのこの大会でのこれからの活躍を期待したい。
■負傷者の多い中盤を支えるユスフ・フォファナとオーレリアン・チュアメニ
そして試合の終盤にはユスフ・フォファナが第1戦の豪州戦に続き、交代出場している。9月に代表入りし、オーストリア戦とデンマーク戦の両方に出場している。ワールドカップでは豪州戦はオーレリアン・チュアメニとの交代、デンマーク戦はグリエズマンとの交代であったが、本来は、エンゴロ・カンテ、ポール・ポグバの欠場によって手薄になった守備的中盤の選手として、昨年までモナコでチームメイトであったチュアメニとのコンビを期待されているであろう。
決勝まで残れば7試合の長丁場となる。疲労もあれば負傷もある。ルカ・エルナンデスの負傷後に入ってきたテオ・エルナンデスが活躍したように、交代して入ってきたレギュラー以外の選手の活躍が必ず必要である。
そして彼らにとって出番がやってきた。それが、決勝トーナメント進出を決めてから行われるグループリーグ最終戦のチュニジア戦なのである。(続く)