第3121回 歴史に残る決勝、PK戦で敗れる (2) オランダ、クロアチアを下し、決勝に進出したアルゼンチン
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■初優勝時の決勝と同一カードとなったオランダ戦
決勝トーナメント1回戦で豪州に勝利したアルゼンチンは準々決勝に進出する。2018年のロシア大会は同じ決勝トーナメント1回戦でフランスと撃ち合いを演じ、3-4で敗れたが、今回の1回戦も後半は撃ち合いとなったが、競り勝った。
そのアルゼンチンの準々決勝の相手はオランダである。オランダは開催国カタールと同じグループA、波乱の多かったグループリーグの中で、このグループAは世界ランキング通りの結果となり、首位で突破した。決勝トーナメント1回戦では若い米国に勝利して準々決勝に臨む。オールドファンの皆様であればよくご存じであろうが、アルゼンチンが初優勝した1978年大会の決勝のカードである。当時のオランダは予選でも活躍したヨハン・クライフが本大会に出場しなかったが、ヨハン・ニースケンス、ロベルト・レンセンブリンクなどが活躍、延長戦にもつれ込みながら最後はマリオ・ケンペスなどのゴールでアルゼンチンが3-1と突き放し、優勝した。2006年にはグループリーグ、2014年には準決勝で対戦、いずれもスコアレスドローであり、2014年の準決勝ではアルゼンチンがPK戦を制し、決勝に進んでいる。
■優位に試合を進めるも終盤の2失点で追いつかれ、最後はPK戦で勝利
試合はアルゼンチンが序盤から一方的に支配する。調子を上げてきたアルゼンチンは35分にリオネル・メッシからのパスをナウエル・モリーナが先制点をあげる。メッシは決勝トーナメントでこれが5つ目のアシスト、ブラジルのペレを交わして単独首位となった。わずか1点のビハインドであったが、オランダは全くなすすべがなく、後半に入った。
後半に入っても目立つのはメッシとそれを支える若い選手たち、オランダはシュート1本に押さえられたまま終盤を迎える。71分にはマルコス・アクーニャがペナルティエリアの中で倒されてPKを得る。これをメッシが決めて、2-0となり、勝負は決したかと思われた。
オランダのルイス・ファンハール監督は、今大会では主役級の活躍をしているメンフィス・デパイを下げてボウト・ベグホルストを投入する。ファンハールは名将である。この起用が決まり、83分にスティーブン・ベルハウスのクロスをヘディングで決めて1点差とする。この試合は荒れた試合になり、多数のイエローカードが出される。後半のアディショナルタイムは10分と表示され、さらにアディショナルタイムに入ってからも時計を止めるシーンが続く。101分、ゴール前でのFKのチャンスをオランダは得る。ここでまさかのサインプレー、これをベグホルストが決めて、試合は延長戦となる。延長に入ってもアルゼンチンが攻め続けるが、勝ち越し点をあげることはできず、試合はPK戦となる。
先蹴はオランダ、しかし、1人目と2人目のキックをアルゼンチンのGKエミリアーノ・マルティネスがストップ、サンパウロでの戦いに続いてアルゼンチンがPK戦を制したのである。
■前回大会ではクロアチアにグループリーグで敗れる
準決勝の相手はクロアチア、前回大会ではグループリーグで対戦し、クロアチアが3-0と勝利している。アルゼンチンはこの敗戦によってグループリーグを2位通過、決勝トーナメントで優勝したフランスと1回戦で当たって敗退という苦い記憶がある。クロアチアのルカ・モドリッチ、アルゼンチンのメッシの「10番対決」、前回はモドリッチに軍配が上がったが、今回はメッシに勝利の女神がほほ笑んだ。
■フリアン・アルバレスが全得点にからみ、3-0と勝利
互角の展開であったが、32分、アルゼンチンは後方からのロングパスを受けたフリアン・アルバレスとGKのドミニク・リバコビッチが接触する。これでアルゼンチンにPKが与えられる。メッシが成功させ、今大会5得点目となる。魂のサッカーを展開してきたクロアチアもこの1点で緊張の糸が切れる。39分にはアルバレスのドリブルを止めることができず、アルゼンチンは追加点をあげる。さらに後半に入ってからもメッシは今大会注目のDFヨシュコ・グバルディオルをドリブルで翻弄、自身でシュートするのではなくアルバレスにパスを出して、アルバレスのゴールでアルゼンチンが3-0と勝利、4年前とは逆のスコアで決勝進出を決めたのである。(続く)