第3125回 歴史に残る決勝、PK戦で敗れる (6) キリアン・ムバッペ覚醒、フランスが追いつき延長戦に
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■後半に入っても続くアルゼンチンペース
前半のうちに2点を先制され、ディディエ・デシャン監督は攻撃陣の2人を前半のうちに交代させるという異例の采配でハーフタイムを迎える。フランスは2点をリードされただけではなく、前半のシュート数はゼロであった。前半のボール支配率はアルゼンチン60％、フランス40％、アルゼンチンは6本のシュートのうち3本が枠内と精度もよく、完全にアルゼンチンに抑え込まれた。
後半開始時の選手交代は両チームともなく、リオネル・メッシがキックオフした時には45分後の戴冠を誰しもが想像したであろう。後半に入っても最初にゴール前に迫ったのはアルゼンチンであった。49分にはロドリゴ・デパウルがシュートするがウーゴ・ロリスがストップする。アルゼンチンは左サイドのニコラス・タグリアフィコとアンヘル・ディマリアがフランスを攻め、59分にはフリアン・アルバレスがシュートするがロリスがセーブする。34歳のディマリアは64分にベンチに下がる。これがアルゼンチンの初めての選手交代であった。
■攻撃陣が次々と交代したフランスで、唯一残ったキリアン・ムバッペがPKで1点返す
68分にフランスはCKからランデル・コロムアニがヘディングシュート、枠をとらえることはできなかったが、これがこの試合でのフランスの初めてのシュートとなる。70分にはキリアン・ムバッペがペナルティアリアにボールを持ち込み、ようやく初めてシュートを放つ。その直後にデシャン監督はグリエズマンとテオ・エルナンデスを下げて、キングスレー・コマンとエドゥアルド・カマビンガを投入する。決勝戦まで攻撃を支えてきた4人のうちの3人をベンチに下げ、ムバッペだけがピッチに残った。
ようやく目覚めたフランスに対し、アルゼンチンも追加点にならなかったが、エンソ・フェルナンデスがシュート、3点目にはつながらない。ムバッペも警戒を強めたアルゼンチン守備陣に包囲され、ボールを失ってしまう。
ドリブルで活路が見いだせなかったムバッペは中盤から前方のスペースにパスを供給する。79分、ムバッペからのパスを受けたコロムアニがペナルティエリア内でニコラス・オタメンディに倒されてしまう。主審はPKをフランスに与える。フランスは今大会で初めてPKを蹴る。キッカーは攻撃陣で唯一先発からピッチに残っているムバッペである。アルゼンチンのGKエミリアーノ・マルティネスは正しい方向に反応し、ボールに触ったものの、ムバッペのキックの威力を止めることができず、フランスは1点を返す。
■PKの2分後のムバッペのシュートで同点に追いついたフランス
この1点でムバッペが覚醒した。その2分後、フランスはメッシからコマンがボールを奪い、アドリアン・ラビオにつなぐ。ラビオは前方のムバッペに浮き球のパス、ムバッペがマルクス・テュラムとパス交換してペナルティエリア内に進入したところで、右足のシュート、見事にゴールネットを揺らし、PK以外での初めての枠内シュートが同点ゴールとなる。得点王争いでもムバッペはメッシを逆転したのである。完全に抑え込まれていたフランスは残り10分のムバッペの2ゴールで追いついた。
■後半アディショナルタイムの好機を両チームとも活かせず、試合は延長戦に
ここからはフランスの時間となる。今度はメッシが孤立する。試合は激しくなり、87分にはテュラムがペナルティエリア内で倒れるが、主審はシミュレーションということでテュラムに警告を出す。また、ラビオはアルバレスとの空中戦の際に頭を打ち、ピッチに倒れ込む。後半のアディショナルタイムは8分と表示されるが、このアディショナルタイムの間にフランスはCKのチャンスを得たがエミリアーノ・マルティネスに防がれる。一方、アルゼンチンはメッシがペナルティエリアの外からシュート、これをロリスが両手で防ぐ。アディショナルタイムに両チームともチャンスを得たが、決勝点を入れることはできず、前後半の90分を終えて2－2のタイスコア、試合は延長戦に突入したのである。（続く）
