第25回 2000年欧州選手権の予選のシステム

■ワールドカップ優勝は過去の栄光に

 わずか1カ月半前のワールドカップ優勝はすでに過去の栄光となり、9月からは2000年の欧州選手権の予選が本格化する。ワールドカップが終われば欧州選手権の予選を戦い、欧州選手権が終わればワールドカップ予選が待っている。東欧の自由化と旧ソ連の崩壊により参加国が増加し、2000年大会は49チームが14の本大会出場枠をめぐって1年半にわたる予選を戦う。すでにワールドカップ前から予選は始まっており、主催国のベルギーとオランダは予選が免除されている。
 欧州選手権出場はワールドカップ出場よりも難関と言われており、フランスの場合も例外ではない。このところ欧州選手権の本大会に2大会連続して出場しているフランス代表ではあるが、それまでの予選での成績は芳しくない。予選制度が導入された最初の大会(1968年大会)で予選突破をして以来、1992年大会まで予選を突破しておらず、4大会連続で予選落ちしている。(1984年大会は開催国として出場)

■「フェアプレーポイント」の導入に見るUEFAの姿勢

 組み合わせ抽選会は、すでに今年の1月18日にベルギーのガントで行われた。49の参加国が9つのグループに分けられ、ホームアンドアウエー方式で戦う。各グループのトップは自動的に本大会出場、グループ2位の中で最も成績の良い国も本大会出場となる。それ以外の8つのグループの2位についてはプレーオフが行われ、勝者4チームが出場権を得る。
 この予選の規定の特徴としては、勝ち点、得失点差、総得点の順で順位が決定するが、4番目の要素としてアウエーゲームでの総得点、5番目の要素としてフェアプレーポイントがあり、得点力の増加とフェアプレーの推進というUEFA(欧州サッカー連盟)の意図がくみ取られる点にある。この規定は、来年の本大会でも引き続き適応される見込みである。また、最も成績の良い2位チームの決定に関してはグループ内の上位4チームとの対戦だけがカウントされる。

■組み分けに当たり、細かにクラス分けされた参加国

 さて、この最も成績の良い2位チームの決定方法について疑問を持たれた方も少なくないのではないだろうか。もちろん各グループのチーム数が異なることから単純に勝ち点を比較できないが、なぜ「上位4チーム」なのか。
 それはこの組み分けに当たって細かいクラス分けがなされているからである。UEFAは予選参加49か国を5つのシード分けしている。すなわち第1シードから第4シードまで各9か国、第5シード13か国である。各グループの構成は、第1シードから第4シードまでが1チームずつ入り、第5シードの国が1つあるいは2つ入り、合計5または6か国からなる。したがって、グループを越えて比較をする場合は、均等に分散されている「上位4か国」との対戦が対象となるのである。
 それではこのシード順はどのように決定されるのか。それは1996年の欧州選手権と1998年のワールドカップの予選の成績(1試合あたりの平均勝ち点)で決められる。開催国として欧州選手権(イングランド)やワールドカップ(フランス)の予選が免除されている国の場合、出場した予選だけが対象となる。この方式によって不利益を被ったのがフランスである。フランスの場合、前回の連載にもあるとおり1996年の欧州選手権の予選は5勝5分という成績でルーマニアに続くグループ2位であった。この5勝5分という成績では第1シードに届かず、第2シードに入れられてしまった。昨年9月のUEFAの会議で直近の試合のないフランスの場合は親善試合も勘案するよう要望を出していたが、結局受け入れられなかった。

■フランスのグループには、強敵ロシアとウクライナ

 この結果、第1シードはドイツ、スペイン、ルーマニア、ロシア、イングランド、ユーゴスラビア、スコットランド、イタリア、ノルウェーの9か国。フランスはブルガリア、デンマーク、クロアチア、ポルトガル、オーストリア、チェコ、トルコ、ギリシャとともに第2シードにとどまった。また、第1シードの中でリーグ戦のレベルが高いドイツ、イングランド、スペイン、イタリアの4か国は5チームのグループに入れられることが決まった。
 このような、細かいクラス分けがなされ、抽選会が行われ、フランスはロシア(第1シード)、ウクライナ(第3シード)、アイスランド(第4シード)、アルメニア(第5シード)、アンドラ(第5シード)とともにグループ4に入った。この組み合わせの評価としては、6カ国のグループに入り日程的には苦しくなったが、まず第1シードの国が強豪ではなかったという点はプラス要因であり、第3シードの中では最も力があると思われるウクライナが入ったことがマイナス要因である。
 フランスは、第1シードのロシアに対し、今年3月の親善試合(アウェー)では0-1の最小得点差ながら完敗し、通算成績もフランスの2勝6分5敗と負け越している。旧ソ連のウクライナもフランスとの対戦はないが、ディナモ・キエフのお膝下というだけで恐怖感を十分に与える相手である。アイスランドは欧州選手権予選で同じグループに入るのは1976年、1988年、1992年に続きこれが4回目である。旧ソ連のアルメニアは奇しくもユーリ・ジョルカエフとアラン・ボゴシアンの故郷である。また、ワールドカップ予選にも出場したことのないアンドラは今回が初めての欧州選手権予選への出場となる。シード制度の設定によりこのような国にも予選参加の道を開いていることはサッカーの普及という点で好ましいことである。

■代表チームの負担を軽減するスケジュール

 予選出場国の増加に伴い、スケジュールがハードになった。そのため、従来の1カ月に1試合の割合で予選を消化するのではなく、中3日で予選を2試合行うように変更し、代表チームの結成の負担を減らすように配慮されている。
 フランス代表は、9月5日にアイスランド(アウェー)、10月10日にロシア(アウェー)、10月14日にアンドラ(ホーム)、年が明けて98年3月27日にウクライナ(ホーム)、3月31日にアルメニア(ホーム)、6月5日にロシア(ホーム)、6月9日にアンドラ(アウェー)、シーズンが変わってから9月4日にウクライナ(アウェー)、9月8日にアルメニア(アウェー)、10月9日にアイスランド(ホーム)と対戦する。ここまでで所定の成績が残せないと11月に行われるプレーオフが待っているのである。

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