第58回 フランス、予選最終戦でチケットを獲得

■これぞリーグ戦の醍醐味! グループ4の最終戦

 10月9日土曜日、混戦となった欧州選手権予選グループ4の最終戦が行われ、ロシアがウクライナを、フランスがアイスランドを、それぞれホームに迎えた。最終戦を残して1位はウクライナ(勝ち点19、得失点差+10)、2位はロシア(18、+10)、3位はフランス(18、+6)、4位がアイスランド(15、+6)であり、上位チーム同士の直接対決という非常に興味深いカードとなった。
 フランスが勝てば、プレーオフ出場以上は確保できるが、得失点差の関係でロシアはフランスより優位である。フランスの本大会出場を獲得することができるのは次の2ケース。フランスがアイスランドに勝ち、ウクライナがロシアと引き分けるか、またはフランスがアイスランドに大勝し、ロシアがウクライナに僅差で勝って現段階の得失点差の差(4)を逆転したときのみである。

■序盤でつまずいたロシアが今年に入り巻き返す

 このグループを混戦にさせた主はロシアである。第一シードとなったにも関わらず、初戦(98年9月5日)にはアウェーでウクライナに2-3で敗れたのを皮切りに、ホーム第一戦となった98年10月10日のフランス戦では旧ソ連以来初めてホームでフランスに勝ち星を与えたことはこの連載でご紹介したとおりである。モスクワでのショックも立ち直らないままにその4日後には欧州最北西のレイキャビクでアイスランドに0-1で開幕3連敗。ドロー(組分け)に恵まれなかったとはいえ、意外な結果で1998年が終わる。昨年末の時点で首位は3連勝のウクライナ。フランスは初戦でアイスランドにまさかの引き分けだったが、2勝1分で2位につけ、直接対決を2試合とも1999年に残している両チームが首位を争うとみられた。
 しかし、年が変わり様相は変化する。ウクライナ、フランスにもたつきが見られ、ウクライナは負けこそなかったものの、ホームでアイスランド、アウェーでアルメニアに引き分けに持ち込まれる。一方フランスはバルセロナで行われたアウェーのアンドラ戦はあわやスコアレスドロー、85分にようやくPKを得て1-0で本大会への期待をつないだ。そして肝心のフランスとウクライナの直接対決は2試合ともスコアレスドロー。
 両チームが決定的に勝ち点をのばせないところに出てきたのが、開幕3連敗したロシアである。年が変わり6連勝。6月5日にはスタッド・ド・フランスでフランスを破った唯一のチームとなる。第一シードの意地を見せ、モスクワでの最終戦を残して2位につける。前述したとおりフランスが大勝しない限りウクライナに勝てば本大会への出場権を獲得する。

■久しぶりにゴールマウスを守るのはベテランGKラマ

 フランス-アイスランド戦とロシア-ウクライナ戦がいずれも本大会出場がかかった試合となることから、UEFAは両試合の同時刻のキックオフを決定。スタッド・ド・フランスの試合のチケットには20時45分キックオフと印刷されていたが、フランス時間で18時にキックオフされることとなった。
 予選の開幕戦のレイキャビクでの戦いはセカンドジャージの白を着用したが、ホームではファーストジャージの「ブルー」がフィールドに広がる。キャプテンマークはもちろんボランチのディディエ・デシャン。もう一人のボランチはアラン・ボゴシアン。ストッパーはマルセル・デサイーとローラン・ブラン。両サイドには右にリリアン・テュラム、左にビシャンテ・リザラズ。ジネディーヌ・ジダンは定位置の9.5といった定番メンバー。攻撃陣は「21世紀のストライカー」ニコラ・アネルカが累積警告で不在。ワントップにリリアン・ラスランド、左にユーリ・ジョルカエフ、右にシルバン・ビルトール。
 ゴールマウスを守るのは、警告累積で出場停止となったファビアン・バルテスに代わってベルナール・ラマ。昨年10月のホームのアンドラ戦以来の代表の試合となり、実に36才6か月。フランス代表史上最年長のゴールキーパーである。40試合で24勝14分2敗というすばらしい成績を残しているが、その2敗はアメリカ・ワールドカップ予選の最後のイスラエル戦とブルガリア戦。昨年のワールドカップでは22人の選手のうち唯一出場機会に恵まれなかった(チャンスのあったグループリーグ最終戦のデンマーク戦では出場を拒否している)。高齢、久しぶりの代表での試合、大一番での弱さなど不安の種は尽きない。

■息詰まる終盤、シェフチェンコのFKがロシアゴールに・・・

 試合は予定どおりのキックオフ。18分にはレイキャビクでの先制ゴールの記憶も新しいアイスランドのダダソンがジョルカエフのFKを頭に当てオウンゴール。39分にはジョルカエフが追加点。前半は2-0で折り返す。この時点でモスクワは両チーム得点なし。
 このまま試合が終わればフランスが本大会出場になるが、後半になりパリとモスクワを結ぶドラマは急展開する。
 49分にはアイスランドのスベルソンが反撃のゴール。そして56分にはガンナーソンがカウンターからの同点弾で2-2に。時計は19時10分。この時点でフランスは3位に落ちる。63分、フランスは不調のラスランドに代えてダビッド・トレズゲ投入。このところオリンピック代表に回っており、半年ぶりのフル代表である。この起用が見事的中。71分にCKからのこぼれ球をトレズゲが押し込んで勝ち越し、モスクワは依然として両チーム無得点で再びフランスが首位になる。
 しかしその4分後の19時29分、8万2000人という欧州最大の観衆を飲み込んだモスクワのルジニキー・スタジアムでロシアのカルピンがゴールを決める。この段階でロシアがトップに立ち、フランスは2位に落ちる。試合時間は残り15分、スタッド・ド・フランスの78,391人の観衆の願いはジダンのゴールでもなければトレズゲの2点目でもない。ウクライナのエース、シェフチェンコの同点ゴールである。
 その祈りは通じた。ロシア-ウクライナの87分、シェフチェンコの左からのFKをロシアGKのフィリモノフがミスし、オウンゴールとなる。フランスがトップに躍りでるとともにロシアは3位に沈む。そして19時49分、ほとんど同時に二つの試合はタイムアップ。まさに気分はロシアン・ルーレットの90分間。前回のイングランド大会に続きフランスは予選最終戦で見事チケットを確保したのである。
 フランス代表は11月13日に予選落ちしたクロアチアと親善試合を行う。海峡の向こうでは拓海良さんがスコットランド-イングランドのプレーオフを楽しみにしていることであろう。

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