第65回 熱戦!第22回アフリカ選手権
■アフリカと結びつきの強いフランス
2年に一度開催されるアフリカ選手権が1月22日に開幕した。ワールドカップ、欧州選手権の本大会の年の始めに行われる国別対抗戦であるが、ワールドカップや欧州選手権とは違った意味で注目を集めている。
まず、欧州選手権と同じ16か国が参加するが、爆発的に増加するアフリカの人口を背景に、テレビ視聴者数は欧州選手権以上の規模である。また、アフリカから職を求めて欧州大陸に渡った移民もテレビ視聴者として無視できず、欧州各国でもテレビ中継される。欧州選手権がいかに注目を集めても欧州以外に在住する欧州人をテレビ視聴者としてカウントはできない。
特に欧米各国の中で最もアフリカ政策に積極的なフランスでは、注目度の高いスポーツイベントである。フランスは1997年以来、サハラ以南のアフリカ駐留フランス軍を8350人から5000人に削減しているが、依然としてアフリカに対して大きな影響力を持っている。毎年フランス・アフリカ諸国首脳会議が「ホームアンドアウェー」で行われ、近年はフランス語圏だけではなく英語圏、ポルトガル語圏など40か国以上が参加している(アフリカ全体の国の数は54)。
このようにアフリカと政治的・経済的に結びつきの強いフランスは、アフリカからの移民を多数抱えている。彼らは雇用と高い生活水準を求めてフランスに渡り、本国に残っているよりもはるかに高い収入を得ることができる。したがって、広告の対象は「フランス在住のアフリカ人」となり、フランス企業の看板が多くなる。
一方、多くのアフリカからの選手がフランスリーグで活躍している。これは旧宗主国としてフランス語圏の選手にとってフランスがあこがれの地であることに加え、多くのフランス人指導者がアフリカの地でタレントを発掘してきたことも見逃せない事実である。
■EURO2000、2002年ワールドカップに先駆けた共同開催
さて、今回の大会はナイジェリアとガーナで共同開催される。今夏の欧州選手権(ベルギーとオランダ)、2002年のワールドカップ(韓国と日本)の共同開催に先駆けたサッカー界の実験となる。ナイジェリアとガーナはいずれも旧英国領であるが、二か国の間にはベニンとトーゴという旧フランス領の二か国が存在する。グループリーグ開催地と組分けは下表の通りである。
アクラ | グループA | ガーナ、カメルーン、コートジボワール、トーゴ |
クマシ | グループB | 南アフリカ、ガボン、コンゴ民主共和国、アルジェリア |
カノ | グループC | エジプト、ザンビア、ブルキナファソ、セネガル |
ラゴス | グループD | ナイジェリア、チュニジア、モロッコ、コンゴ共和国 |
各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進出、準々決勝はナイジェリアで3試合(カノ2試合、ラゴス1試合)、ガーナで1試合(アクラ)、準決勝はラゴスとアクラで1試合ずつ行われる。3位決定戦はアクラで行われ、決勝はラゴスで行われる。開幕戦はアクラで行われるが、決勝トーナメントでナイジェリアに重点が置かれている。これはやはり昨年のワールドユースの開催実績と国力の差(ナイジェリアの人口は1億2000万人、ガーナは1800万人)であろう。
組分けから見るとグループAとDに強豪が集中した。グループAのガーナはアベディ・ペレの印象が強烈であるが、すでに彼は代表から引退した。しかしポスト・ペレのゴールデンエイジが注目を集め、開幕戦で対戦するカメルーン、コートジボワールとの対決が楽しみである。またグループDではモロッコ、チュニジアとコンゴ共和国、ナイジェリアの南北対決が注目される。
■大会中フランスからアフリカに戻る選手は12カ国の41人
さて、アフリカのタレントが欧州の強豪クラブで活躍しており、ナイジェリアのカヌー(アーセナル)、ウェスト(ACミラノ)、イクペバ(ドルトムント)、カメルーンのジェレミー(レアル・マドリッド)、エンボマ(カリアリ)、モロッコのハジ(コベントリー)などの選手がビッグネームである。
しかし、今大会は過去にないほどのフランス色の強い大会である。なんとフランスリーグに所属している選手は、コートジボワールの7人を筆頭に、カメルーン6人、アルジェリア6人など12か国の41人。その中でも大物はパリサンジェルマンのジェイジェイ・オコチャとオクパラのナイジェリアコンビである。一方チーム別に見ると、サンテエチエンヌが4人、ストラスブールが3人の選手をアフリカの地に最大3週間に渡って返すことになる。この間フランスではリーグ戦が3試合、フランスカップが2試合、リーグカップが1試合行われる。
また、アフリカというとクロード・ルロワとフィリップ・トルシエという2人のフランス人監督が有名である。しかしアフリカ諸国を渡り歩いたこの2人は今大会はいない。ルロワはストラスブールで指揮を執り、トルシエは日本に渡っている。今大会も4人のフランス人指揮官が活躍することになる。モロッコのアンリ・ミッシェル、前回優勝のエジプトのジェラール・ジリ、カメルーンのピエール・ラシャントル、アルジェリアのナセル・サンジャックである。また、審判もFIFAの要請でアラン・サルスが派遣され、指導・育成に当たる。
前述の欧州のビッグクラブで活躍するスターもフランスリーグに所属していた選手が多い。多くのアフリカのタレントがフランスを経由して世界へ羽ばたいている。彼らの原点、アフリカ選手権、今回も実に楽しみである。