連覇を狙うフランス・サッカー 「コンフェデレーションズカップ総括」(4)
連覇の予感漂う見事な遠征
さて、決勝の相手は地元・日本。スタジアムはブルーに染まるが、もちろんこれは日本のチームカラー。フランス人監督フィリップ・トルシエの下でチーム強化を図り、決勝進出を果たした。 3月25日のサンドニでの試合も記憶に新しいが、昨今の日本サッカーの実力を侮ることはできない。今大会に参加した選手の所属リーグを調べてみよう。181人がエントリー(カナダは22人、カメルーンは21人、その他の国は23人)しているが、所属している選手の最も多いリーグは日本の30人であり、2位のイングランド、メキシコの23人を大きく上回っている。4カ国から選手が集まっているフランスリーグはそれに続く22人である。
また、今大会にかける日本の意気込みというものも並々ならぬものがある。日程が重なり多くの選手がリーグを優先したスペインリーグ、イタリアリーグからも選手を招集している。今大会でセリエAから出場した選手は6人、スペインリーグ1部から出場した選手は5人しかいないが、日本はそのうちの2人を占める。
このような日本の実力と意気込みに対し、フランスの先発メンバーは、ブラジル戦同様、経験を生かしたメンバーを起用し、GKラメ、DFカランブー、デサイー、ルブッフ、リザラズ、MFマルレ、ビエイラ、ピレス、ジョルカエフ、ビルトール、FWアネルカという布陣となった。注目すべきは右サイドのDFにカランブーを起用し、攻撃を重視していることと、本来は左サイドのMFであるピレスをビエイラとコンビを組んだ守備的MFとして定着させたことである。
試合はフランスが支配する。日本のGKのスーパーセーブの連発に手を焼いたものの、29分にルブッフが右サイドからクロスを上げ、ビエイラがヘッドで競り勝ち、無人のゴールへボールは飛び込む。その後も攻勢を続けるが、追加点が奪えず、前半終了。
後半に入り、フランスはややトーンダウンする。攻撃陣は相次ぐゴールチャンスを逃すとともに、日本の整備されたディフェンスラインのオフサイドトラップにかかる。試合の主導権に執着しないというフランスの悪い癖が出るが、両センターバックのデサイーとルブッフの安定した守備に日本も全くチャンスを広げることができない。攻撃陣にフラストレーションを感じたルメール監督はロベール、カリエールを投入。リズムは変わるが、肝心のアネルカは開幕戦で得点を挙げただけでタイムアップ。結局、1-0という最少得点でフランスは初出場、初優勝を遂げたのである。
見事に優勝を成し遂げたフランス代表の収穫をまとめてみよう。
まず、前回の連載で取り上げた「8人の初代表メンバー」であるが、残念ながらそれなりの活躍ができたのはカリエールだけであり、残りの7人については苦い思い出の残る極東遠征となったであろう。
一方、既存メンバーの新たなポテンシャルを発掘するという点では意義のある遠征であった。昨年の欧州選手権後にフランス代表に訪れた最大の変化はディディエ・デシャン、ローラン・ブランという守備的なポジションにいたリーダーの代表からの引退である。ポスト・デシャン、ポスト・ブランの確立が、フランス代表が来年6月30日に再び横浜の地でトロフィーを掲げる条件であることは間違いない。キャプテンとしてはデサイー、守備的MFとしてはビエイラ、センターバックとしてはルブッフ、シルベストルが既に活躍しているが、今大会では単なるポジションや役割だけではないチームの柱を発掘・育成することができた。シルベストル、サニョル、ビエイラ、ピレスなどがチームの核と成り得る可能性を秘めた選手であることが分かったのは大きな収穫である。中でも今大会最優秀選手に輝いたピレスの守備的MFとしての新たな成長は楽しみである。
今回の遠征は来年に向けて重要な意味を持つ。選手についてはジダンなどを欠く陣容であったが、それ以外の部分も必要最低限のスタッフしか帯同させないという、条件的には恵まれていない遠征であった。フランス代表の遠征というと食材などを大量に輸送することで有名であるが、今回の遠征にフランスから輸送した食材はオリーブオイルとマスタードだけであった。そのような恵まれていない遠征であるにもかかわらず、優勝できたことは大きな自信につながったはずである。
フランス代表が再び栄冠の座につくことを予感させるような見事な遠征であった。(この項、了)