伝説を築く「ブルー」の真価(4) ~2002年への第一幕を振り返る~
決して満足のいくものではなかった4つの親善試合
3月下旬に行われた4つの国際試合。結局1勝1分2敗と負け越してしまった。
まず、先ぽうは3月22日にドイツA'と対戦したフランスA'。フランスは2月27日のフル代表の試合でドイツに勝ったことは本連載の第2回でお伝えしたとおりだが、実に1986年のワールドカップ・メキシコ大会の準決勝以来ドイツに勝ち続けている。この相性の良さがギ・ステファン率いるフランスA'にも受け継がれると期待されたが、ミュールーズで行われた試合の前半は動きが悪く、33分にPKで失点し、前半終了間際にはシュナイダーのCKをリッケンが頭で合わせ、追加点を献上する。後半に入り立て直しを図ったが、結局70分にスティーブ・マルレがPKで1点を返したにとどまり、99年に就任以来5勝1分と負け知らずだったステファン監督は7試合目で初めて黒星を喫したのである。また、この試合は警告が多発(フランス2、ドイツ5)し、残念な試合であった。
続く24日にはサンドニでフル代表が日本と対戦した。パリには珍しい豪雨に見舞われた後のフィールドの状態は悪かったが、相手の日本の状態はさらに悪かった。日本の読者の皆さんはよくご存じのとおり、フランスが5-0で完勝し、このシリーズ唯一の白星を挙げる。
そして25日はこのシリーズで唯一タイトル(U-23の欧州選手権予選)がかかったスペイン戦。フランスはスペイン、オーストリア、イスラエル、ボスニア・ヘルツェゴビナとともにグループ7に所属し、来年の本大会を目指すべく現在まで4連勝で勝ち点12。対するスペインは99年のワールドユース優勝、昨年のシドニーオリンピック準優勝とこの世代では抜群の実績を残しているが、オリンピック直後の昨年10月にアウエーとはいえオーストリアに1-2で敗れ、1試合少ないこともあり勝ち点は6。天王山ともいえるカードとなった。
フランスは2月にテルアビブで行われたイスラエル戦では点の取り合いの末4-3で競り勝ったが、守備の破たんを修正し、スペイン戦に臨む。守備の中心はこのチームに25回目の選出となるマルセイユのストッパーのズマナ・カマラ。しかし、フランスA'同様、前半の動きが悪く、39分にPKをチャビに決められ先制を許す。後半に入り、ユース世代の名将レイモン・ドメネッシュは56分にリヨンの切り札シドニー・ゴブーを投入する。ゴブーの投入が試合のリズムを変え、67分にはゴブーにタックルに入ったスペインのマルシャナが退場。80分にはゴブーがファールを受けてPK。自らがPKを成功させ、アウエーの試合を1-1に持ち込んだ。最大のライバルとの試合をドローで終え、フランスは本大会に向けて大きく前進した。
そして締めくくりはバレンシアでのスペイン戦。日本戦でフランク・ルブッフが負傷したため、フランスA'に初めて選出されたばかりの巨漢ジョナタン・ゼビナを初めてフル代表に招集する。フランスの布陣は日本戦と同じ伝統の4-2-3-1。GKはリオネル・レティジ、DFは左からビクサンテ・リザラズ、マルセル・デサイー、ミカエル・シルベストル、クリスチャン・カランブー、守備的MFにはパトリック・ビエラ、エマニュエル・プチの2人。攻撃的MFにはジネディーヌ・ジダンを中心に右にクロード・マケレレ、左にクリストフ・デュガリー、そしてトップはティエリー・アンリとほぼ日本戦と変わらないベストメンバー。しかしスペインに攻め込まれ、攻撃的マケレレとデュガリーは後退し、4-4-1-1のような守勢に追い込まれる。スペインに2点を先行され、ようやく終了5分前にトレゼゲが1点を返すにとどまり、昨年の欧州選手権のオランダ戦以来の敗戦となった。
それぞれの試合の勝敗はともかく、ロジェ・ルメール監督が「2002年のワールドカップへの第一幕」としている4つの国際試合での1勝1分2敗という成績は満足のいくものではない。その中でジダンの安定したプレー、右サイドの主役となったロベール・ピレス、3年ぶりの代表復帰で及第点を獲得したサブリ・ラムーシ、そして日本戦、スペイン戦とも交代出場で得点を挙げ、代表の試合で27試合、1202分間出場で12得点という驚異的な得点力を誇るトレゼゲなどの力を再認識できたことは収穫であった。(了)